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東証社長など証券界の主要ポスト 野村OBが「独占」に違和感

   東京証券取引所は今夏に持ち株会社に移行した後の次期社長に、野村証券出身の斉藤惇・元産業再生機構社長を充てる人事を発表した。東証は1960年代から旧大蔵省OBがトップを務め、絶大な影響力を保持してきたが、2004年に東証生え抜きの鶴島琢夫氏が社長に就任して以来、流れが変わった。東芝出身の西室泰三氏が会長と社長を兼務したのに続き、2代連続で旧大蔵省でも東証のOBでもない民間出身のリーダーが社長を務めることになる。証券会社出身の東証のトップは、戦後、1957年から61年まで東証理事長を務めた藍澤証券の藍沢弥八氏以来、実に約半世紀ぶりとなる。

業界で待望論の強かった新社長が就任

東証の人事に注目が集まっている
東証の人事に注目が集まっている

   証券業界では、財界首脳ではあるものの、証券業界に必ずしも明るくない西室社長に対する不満が強かっただけに、斉藤氏への期待は大きい。だが 、証券業界の西室氏への不満とは、日本経団連の副会長や政府の諮問機関の会長など要職を歴任し、東証内でも東芝流の成果主義を導入しようとした「改革派」の西室氏に対する警戒感や「やっかみ」が強かった。

   証券業界で待望論の強かった斉藤氏は、先に解散した産業再生機構でダイエーの再建など成果を上げたものの、東証トップとしての力量は未知数だ。東証は株式会社にはなったものの、国内には競争相手がいないため、スタッフは年功序列の「ぬるま湯」的な体質に陥りやすく、「お役所的」との批判も強い。そんな東証内部の意識改革が「身内」の斉藤氏にできるのか。ニューヨーク証券取引所などとの国際的な再編が目前に迫る中、斉藤氏の経営手腕が問われることになる。

   一方、斉藤氏が東証社長に就任することで、証券業界の主要ポストをいずれも野村証券出身者が占めることには違和感が残る。大手マスコミも指摘しているが、日本証券業協会の安東俊夫会長、ジャスダック証券取引所の筒井高志社長に、斉藤氏が加わることになるが、いずれも野村OBだ。

野村グループ自身批判を意識

   この批判を意識してか、西室氏は自らの後任に斉藤氏を積極的に推したわけではないようだ。西室氏は斉藤氏と親交があったわけではなく、東証の社外取締役を務める大御所、氏家純一・野村ホールディングス会長と相談した結果、氏家氏の強い推薦で起用が決まったといわれる。

   業界の主要ポストを野村出身者が占めることへの批判を最も強く感じているのは、野村グループ自身のようだ。氏家氏は6月の株主総会で東証の社外取締役を辞任。後任には原良也・大和証券グループ本社会長が就任する。西室氏は「野村一辺倒ではなく、投資家や証券業界から支持される東証を目指したい」と理解を求めたが、証券業界のガリバーである野村証券の影響力が強まることに、業界関係者は警戒感を示している。