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パラグアイで誘拐された 統一教会信者の「活動」ぶり

   南米パラグアイで発生した日本人誘拐事件で、被害者2人がともに世界基督教統一神霊協会(統一教会)だったことが明らかになり、2人の現地での「活動」ぶりに注目が集まっている。被害者のことを「統一教会の大幹部」と報じる夕刊紙もあるが、統一教会側は「単なる一般信者。報道が犯人をたきつけている」と反発している。

   2007年4月1日午後、パラグアイ南東部のカナグアス県で会社社長の太田洪量さん(62)と秘書の山口佐和子さん(37)とパラグアイ人2人が、3~4人組の集団に拉致された。犯人グループは、多額の身代金を要求しているという。今回誘拐された日本人2人が統一教会に所属していたことから、単なる誘拐事件とは別の角度で注目されることになった。

「千葉県ほどの広大な土地を準備」

「中和新聞」は、統一教会のパラグアイでの活動ぶりを伝えている
「中和新聞」は、統一教会のパラグアイでの活動ぶりを伝えている

   4月3日には夕刊紙「日刊ゲンダイ」が「実は統一教会の大幹部」という脇見出しを付けて報道。同紙に対して、ジャーナリストの有田芳生氏は、太田さんのプロフィールをこう説明している。

「統一教会の関連団体・原理研究会会長や勝共連合の会長を務めた最高幹部のひとり。97年ごろにパラグアイに『国家メシア』として派遣されました。国家メシアとは教祖の文鮮明氏から『その国を救う使命を与えられたもの』という意味です」

   その上で、同紙では、太田さんが現地での宗教活動の責任者だったのではないか、という見方をしている。

   確かに、統一教会の機関紙「中和新聞」の07年2月15日号の「海外だより パラグアイ1」というコーナーには、こんな記述がある。

「真のお父様(編注: 文鮮明氏)は世界の食料難、飢餓問題などを解決するために、チャコ地方のカサドに60万ヘクタール(千葉県ほど)の広大な土地を準備されています。北方のレダでは、真の父母様の願いを受けて日本の国家的メシヤの方々が、8万ヘクタールの土地を自力で開拓し、精誠を尽くされました。今では美しい新天新地が広がっています。 5年前から日本人宣教師やボランティア10人が、『2010年までに120教会建設とその教会長の育成』を目標に励んできました。言葉の壁、40度を超える暑さとの闘い以外は恵まれた環境でした。この期間、21教会が献堂され、メンバーも5倍近くに増えました」

   ここに紹介されている活動の責任者が太田さんかどうかは分からないが、統一教会として、かなり「入植」に力を入れていることが伺える内容だ。

「街を豊かにする」との触れ込み

   その一方で、現地でのトラブルもない訳ではなさそうだ。05年8月には、英エコノミスト誌が「約束の地: パラグアイと統一教会信者」という記事を掲載した。記事では、統一教会側が「街を豊かにする」との触れ込みで土地を買ったにもかかわらず、5年経ってもそれが守られないことに住民が反発、「カルトから解放してくれ」と議会まで陳情に行ったことなどが紹介されている。

   一方の統一教会側は、「あくまで2人はただの信者」というスタンスを取っている。同教会広報部はJ-CASTニュースに対し、

「(誘拐された2人が)統一教会の土地を管理している会社の社長および社員なのは事実だが、(統一教会という宗教)法人としての役職はなく、あくまで一般信者。誘拐犯もマスコミ報道を良く見ているらしく、一部マスコミが『統一教会の幹部』と報じたことで身代金の要求額が上がるなど、犯人をたきつけている。しばらく静かにしておいてほしい、というのがこちら側の希望です」

と話している。教会側が言うように、4月5日に共同通信が報じたところによると、当初は2万5,000ドルを要求していた身代金が、4日までに75万ドル(約8,900万円)に大幅に引き上げられている。