J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「ソニータイマー」という言葉 中鉢社長「認識」の真意

   ソニー製品に故障が多いという意味の「ソニータイマー」という言葉がある。一定の期間が過ぎると壊れるというわけだ。ネット上ではかなり「流通」していたが、ソニーのトップがそうした言葉があることを株主総会の場で認めた。真意はなんだったのか。

   ソニーは2007年6月21日、東京都内で株主総会を開いた。その席で、ソニーの中鉢良治社長がソニータイマーという批判があることについて「認識している」と答えた。

「ついに公認になったのか」とネットで話題に

   「ソニータイマー」とは、一定の保証期間が過ぎたころに「仕組まれたタイマーが作動し(たかのように)」故障が多発し、有料修理をせざるを得なくなる状況が起こることを指す、とされる。ネット上では「タイマーの被害にあった」と主張する怒りのコメントから「私が買った製品は丈夫だ」と擁護する声まで様々だ。「10年以上前からある言葉だ」という指摘もあるが、2006年夏のパソコン用リチウムイオン電池が発火し自主交換する事件を機に一層浸透した。06年9月に読売新聞(東京版)に「ソニータイマー」の言葉が登場している。

   中鉢社長の株主総会の「認識している」発言は、2ちゃんねるmixi(ミクシィ)でも早速6月21日から話題になった。「ついにソニータイマーがソニー公認になったのか」「社長が公式にソニータイマーを認めた」といった批判が並んだ。一方で「そんな精巧なタイマーがある訳がない」「(壊れる時期は)使い方次第だ」との反論も多い。「言葉として認識してるって意味だろ」と発言趣旨に疑問を投げかける書き込みもあった。

   実際はどういうやりとりだったのか。J-CASTニュースがソニー広報センターに聞いた。同センターによると、ソニータイマーが議題に上ったのは株主総会の後半。挙手による総会での質問とは別に、株主が事前に文書提出した質問を司会担当者が読み上げる形で出た。「ソニータイマー」という、品質の問題への批判の言葉があるという趣旨の質問で、これに対し中鉢社長は「『ソニータイマー』という言葉は認識しております」と答えた。さらに、「品質、価格と供給が大切で、お客様に対して満足して頂くのが必要」「しかしそのバランスが崩れご迷惑をおかけしました」と述べた。その上で、品質担当役員を置いたり資材や事業所の監査を徹底したりと品質向上に向けた取り組みを説明した。

品質に関して批判や不安感がある、という現実を認めたもの

   社長の「認識発言」は、単に言葉を聞いたことがあるという趣旨なのだろうか。同センター担当者は、「(社長)本人に確認した訳ではない」とした上で、単に言葉を知っているというだけでなく、品質に関して批判や不安感がある、という現実を認め、その上で実行中の改善策を示したものという。しかし、ネット上では「壊れやすい」ではなく「意図的に故障させている」との疑念も表明されているが、と質問すると「それはあり得ないです」と否定した。

   ソニーの株主総会へ出席し、「戦略的組織革新―シャープ・ソニー・松下電器の比較」などの著書もある筑波大大学院の河合忠彦教授(経営戦略論)は「ソニータイマー」という言葉自体については疑問だとする。「ソニーだけをそういう形で取り上げるのはどうだろうか」といい、他社にも同じ問題はあるという見方だ。しかし「生産よりネットやソフト関連を重視し、品質面がおろそかになった時期があると指摘されている」とし、「タイマー」という言葉が使われる背景は根拠がないことではない、との見方を示した。ただ、その上で「新しい技術に挑戦する潜在力は相当高く、その中で生産面重視の姿勢も現れている」と話し、「今後品質面では改善していくのではないか」とした。