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外資系投資ファンドのせいで ようやく気がついた「個人株主重視」

   3月期決算企業の定時株主総会が本格化してきた。07年は米系投資ファンドのスティール・パートナーズの動きに代表されるように、外資系投資ファンドによる株主提案が相次いでいるのが特色だ。企業にとっては従来以上に緊張感が増す株主総会になっている。

特に多い株主提案は配当の増額

   企業の大株主である外資系ファンドが、経営陣にさまざまな経営改革を求め、積極的に株主提案を行っているケースが目立っている。特に多い提案は配当の増額だ。スティールが江崎グリコやブラザー工業、因幡電機産業などに大幅な増配を求めたのをはじめ、英系投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベス トメントも中部電力やJパワー(電源開発)に増配を要求。また、米系投資ファンドのセーフ・ハーバー・インベストメントは自動車部品メーカーのシンニッタンに対し、増配と自身が推薦する取締役の選任も求めた。

   スティールは今春には、サッポロホールディングスとアデランスのそれぞれの株主総会で、経営側が提案した買収防衛策の導入にも反対した。個人株主をはじめ多くの賛同者を求めて委任状集めも展開しており、株主提案の動きを活発化させている。

   こうした外資系ファンドの株主提案に対抗するため、企業は金融機関や保有比率が高い他の企業などの「安定株主」に対する会社側提案の説明活動を強化。票固めに必死に動きまわる中、特に「個人株主対策が重要」との声が増えている。

   07年2月、電炉中堅の東京鋼鉄の株主総会は多くの企業にとって「悪夢」ともいえた。経営側が提案した大阪製鉄との経営統合案に対し、大株主の投資ファンド、いちごアセットマネジメントが反対を表明。いちごアセットは委任状集めを展開し、これに多くの個人株主が賛同した。その結果、経営統合案は否決に追い込まれた。委任状争奪戦で経営統合が白紙になったケースは国内では初めてという。

個人株主の参加を促すため総会を日曜日に開催

   ある市場関係者は「株主の議決権行使について、企業はこれまで機関投資家や事業会社だけを重視していた。個人株主は無視されていたと言っても過言ではないが、そんな個人株主の重要性を投資ファンドが気づかせた」と説明する。

   スティールにTOB(株式の公開買い付け)を仕掛けられたブルドックソースも、TOBを阻むための買収防衛策導入に多数の個人株主の賛成が不可欠とみて、株主総会を24日の日曜日に開催した。個人株主の参加を促す狙いとされる。かつては9割以上の企業が同一日に開催するなど、総会屋対策に主眼が 置かれていた株主総会。しかし、今は個人株主に向き合い、経営への賛同を得るための努力を続けることが、株主総会対策には欠かせなくなっているといえる。