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新卒でも給与に格差 「革命的制度」進まない理由

   新卒社員といえば、入社時には給料が同じだというのがこれまでの常識だった。ところが、経団連会長が「新卒入社時から給与に格差を」といった趣旨の発言をし、この流れが変わる可能性も出てきた。実はすでに、国内には「入社時点ですでに給与格差」という会社も存在する。だが実際に話を聞いてみると、「制度を積極的にアピール」という訳でもなさそうだ。

日本経団連会長が制度導入を提案

新卒社員でも「給与格差」生まれるのか
新卒社員でも「給与格差」生まれるのか

   発言が飛び出したのは、2006年7月26日に静岡県で開幕した、日本経団連の夏季フォーラムでのことだ。御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)が、採用制度について「平等に採用して会社では年功序列。競争の原理からはほど遠い」などと述べ、入社時点から給与に差を付ける制度の導入を提案した。「学生を成績や論文で評価する」のだという。授業や試験をサボっていた就職活動の大学生には耳の痛い話となりそうだ。

   そうは言っても、すでに国内で「御手洗提案」のような制度を導入している企業も存在する。キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)の子会社でITベンダーのアルゴ21では、この制度を06年の新卒者から導入。「日経コンピュータ」06年5月15日号によると、新卒者51人のうち2人に対してこの制度を適用。1人については150万円、もう1人は125万円、新人の年収に上積みしたという。

   「リクナビ」で公表されている同社の新卒採用者の月給は、203,000円(4年生大学卒、首都圏で自宅外通勤)。上積みされた分を単純に月額ベースに直すと10万円を超える。月給ベースでは、他の新卒者とは、実に1.5倍の給与を手にすることになるという厚遇ぶりだ。

「本当はあまり公表したくないんです」

   同社の人事部に聞いてみると、「(日経コンピュータの)記事の内容に誤りはない」と、制度が運用されていることについては認めながらも、

「(新入社員)同期の中でもめてもいけないので、本当はあまり公表したくないんです」

と話し、07年度社員についてのデータについては明らかにしなかった。制度導入の余波を警戒しているからなのか、「大手を振ってアピール」という訳にはいかないようだ。

   「新日鉄ソリューションズ」も、同様の制度を05年4月から導入している。

   「導入予定」と報じられて、実際には導入されなかった企業もある。日経コンピュータ06年1月23日号では、「CSK」が07年4月入社の新入社員から、入社時の評価試験でスキルを認められた人には月額3万~5万円を給与に上積みする、などと報じている。ところが、同社の親会社「CSKホールティングス」の広報室に確認してみると、

「そのような制度が導入されているという事実はありません。以前、内々に話されたことはあるようですが…」

との答え。制度導入の報道が出た後に、何らかの理由で立ち消えになってしまったようだ。今後の予定についても、

「特に何も決まっていません」

とのことだった。

   御手洗会長の「旗振り」で、この状況がどう変化するのか注目される。