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役員報酬高騰の陰に「ストックオプション」あり?

   大手企業の役員報酬が高騰しているが、その陰に「ストックオプション」(株式購入権)制度の浸透があるという。2007年8月31日現在、東京証券取引所(東証マザーズを含む)に上場する2419社のうち、この制度を導入している企業は約4割といわれる。しかも、最近導入する会社がまた増え始めている。ストックオプションと役員報酬の関係はどうなっているのだろう。

一人あたりの取締役報酬額は6030万円

企業の役員報酬が急騰している(写真はイメージ)
企業の役員報酬が急騰している(写真はイメージ)

   2007年8月28日付の日本経済新聞は「取締役報酬が21%増」と題して主要企業100社が2006年に支払った一人あたりの取締役報酬額は6030万円と、05年度に比べて21%増加したと報じた。業績連動型の報酬制度が広がったことに加え、会社法の施行に伴いストックオプション(株式購入権)を役員報酬に含めるようになったことがあると指摘している。

   役員報酬は、全体的には上昇傾向にあるようだが、製造業大手を中心に業績が好調な上場企業ほど、業績に連動して上向きのようではある。

   企業会計に詳しい日本総合研究所の研究員・三枝裕和氏は、役員報酬の高騰とストックオプションの関係について、「会計基準の変更で見えないものが見えるようになったといえます」と話す。06年度から、ストックオプションにかかるコストは決算時に公開することになった。これまで「ゼロ円」だった役員報酬が、たとえば時価が1億円ならば1億円を費用として計上することになったのだから、役員報酬の数字は増えて当然という。

   当初は現金の支出を伴わない人件費として重宝されていたストックオプションだが、導入する企業は04年度、05年度と減っていた。

   ところが、最近再び増加しているという。アステラス製薬やTDK、ソネットエンタテインメント、ヤフーなどが07年度に入って相次いで導入を発表した。ストックオプションは、株価が好調であれば経営者も株主も多くの利益を得るが、反対に株価が低迷して株主に利益が還元できないときは役員報酬も少なくなる。つまり、そこには役員もリスクをとっていること、また株主を大事にしていることを協調する狙いがある。また、自社株式を購入することで持ち株比率を維持する効果など、企業買収の防衛策にもなると考えられていることも、注目されている原因だ。

「株価が上向けば、導入企業はまだ増える」

   ストックオプションを付与する対象者も役員や従業員、監査役のみならず、取引先にも付与できる。業績連動型のインセティブ報酬として「従業員のやる気を引き出す」効果への期待も小さくない。それもあって、優秀な人材を確保したいベンチャー企業などで多く採用されている。

   ちなみに、東証1部に上場している企業のうち、ストックオプションを導入している企業は30.9%、第2部に上場している企業では24%、マザーズに上場している企業ではじつに79.9%が導入している(06年10月時点、東証調べ)。

   一方、産労総合研究所の「2006年 役員報酬の実態に関する調査」によると、社長の年間報酬額の平均は3100万円になるという。05年に比べて600万円アップした。同研究所の調査では、回答のあった125社のうち49社が上場企業で、76社が未上場企業と幅広く、「企業の規模にバラツキがあるので、中堅・中小企業のケースとみてもらいたい」(同研究所「賃金事情」編集部の堀ノ内長一氏)と話す。

   産労総合研究所はサンプル数が少ないのであくまでも参考としながら、ストックオプションを導入している企業の社長と、導入していない社長の報酬額では約1000万円、導入している企業のほうが高いというデータがある。堀ノ内氏は「株価が上向けば、導入企業はまだ増えるでしょう」とみている。