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月刊誌「選択」が「新聞協会賞」受賞作を「スクープ」

   マスコミ業界関係者が、この時期になると注目するのが「新聞協会賞」だ。受賞した記事は、「この年1番のスクープ」とされることも多く、業界では名誉なことだ。2007年も受賞作品が発表されたばかりだが、その約1週間前に、月刊誌にその内容をすっぱ抜かれるという「珍事」が起きた。

受賞した4件中3件を「的中」させる

受賞作を「予言」した「選択」の記事(左)と、長崎市長銃撃事件を報じる毎日新聞(右)
受賞作を「予言」した「選択」の記事(左)と、長崎市長銃撃事件を報じる毎日新聞(右)

   日本新聞協会は07年9月5日、07年度の「新聞協会賞」を発表した。同賞には「編集」「技術」「経営・業務」の3部門があり、最も注目度の高い「編集部門」は、「ニュース」「写真・映像」「企画」の3部門に分かれる。今年の編集部門は、北日本新聞の「高校必修科目未履修のスクープ」(ニュース部門)、毎日新聞の「長崎市長銃撃事件の事件報道」(写真・映像部門)など4件が選ばれた。

   この「編集部門」の結果が、発表よりも前に、会員制月刊誌「選択」07年9月号に掲載されていたのだ。掲載されたのは、「マスコミ業界ばなし」というコーナー。同コーナーでは、

「今年の『ニュース』部門は北日本新聞社高岡支社の一記者が報じた『高校必修科目未履修』のスクープが選ばれた」

と、断定的に報じており、今回受賞した4件中3件を「的中」させている(記事中には、企画部門の「NHKスペシャル」のみ言及がなかった)。定期購読を原則とする同誌は毎月、月初には届いていることがほとんどで、印刷・郵送の時間を考えると、発表の1週間前に結果を「予言」していたことになる。

   ちなみに、同賞は、各報道機関から応募があったものから選考されるが、応募があったのはニュース部門14件、写真・映像部門13件、企画部門45件。これだけの数から、偶然に的中させるのは難しい。

   北日本新聞が、自身の受賞を伝える記事では

「キャンペーンなどの企画ではなく、特報(スクープ)で地方紙が受賞するのは、昭和45年度(編注: 1970年度)の北日本新聞社『黒部市カドミウム公害のスクープ』以来37年ぶり」

と、地方紙のスクープ記事が受賞するのは異例中の異例であることを強調している。

分科会で内定した段階のものをどこかで手に入れた?

   「選択」の記事でも、わざわざ

「地方紙がスクープ受賞するのは珍しい」
と書いてある。

   写真・映像部門についても、「長崎市長銃撃事件」の写真は、受賞した毎日新聞以外にも、西日本新聞、読売新聞の計3社が応募していた。そんな状況でも、「選択」の記事では、

「毎日新聞長崎支局の記者が撮影した『長崎市長狙撃』の写真が選ばれた」

と、毎日新聞が受賞したことが明記されていた。

   日本新聞協会によると、同賞の審査は「(部門ごとの)分科会→選考委員会」という流れで行われ、理事会で正式決定される。今回の「選択」の「予言記事」が掲載された経緯について聞いてみると、

「『選択』の記事については把握していませんが、分科会で内定した段階のものを、『選択』側がどこかで手に入れたとしか思えませんね…」

との答えが返ってきた。