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相場低迷で割安感 増える「自社株買い」

   企業が自社の発行済み株式を市場から買い戻す「自社株買い」が増加している。2007年8月末までの自社株買い総額は約2兆1,200億円で、過去最高のペースで推移している。米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き問題に端を発した株式市場の低迷で、株の割安感が強まる中、企業にとっては絶好の自社株の「買い場」になっている。

8月の自社株買いは約7500億円、前年同月の約3.5倍

「自社株買い」が増えている(写真はイメージ)
「自社株買い」が増えている(写真はイメージ)

   野村証券の調査では、8月に実施された自社株買いの総額は約7,500億円で、前年同月(約2,130億円)の約3.5倍。同社が集計を始めた 02年度以降の単月ベースでは、NTTが財務省から自社株を大量取得した05年9月(約7,560億円)に次ぐ過去2番目の規模になる。

   この8月、サブプライムローン問題に伴う米国の株安や円高の進行で、日本株は急落。日経平均株価は8月17日、前日終値比約870円安の1万5,273円68銭と年初来安値を更新した。

   そんな中で急速に膨らんでいったのが企業の自社株買いだ。8月には武田薬品工業JFEホールディングス三菱商事などがそれぞれ1,000億~1,500億円と大規模な自社株買いを相次いで実施した。

   自社株買いは、市場の流通株式が減るため、株価上昇要因になる。また、買い取った自社株は株主資本から除かれるため、1株あたりの利益が上がる効果もあり、株主への利益還元としての役割は大きい。

今後も引き続き伸びていくとの見方は強い

   さらに、企業は自社株を購入することで手元資金が減少するため、M&A(企業の合併・買収)の対象になるリスクを減らすこともできる。企業が現金を内部にプールしていれば、その企業を買収した人は買収資金をすぐに回収できるため、買収の標的になりやすいためだ。

   また、企業によっては、買い増した株を消却せず、金庫株として残し、将来、M&Aを行う際の株式交換などに使えるよう備えるケースも増えている。

   今回は、急速な株価低迷で、「実際の企業業績に比べて株価が割安」と考える企業が効率的に自社株を取得できる環境になった、と判断し、一気に動き出したといえる。株価低迷の中で、自社株買いにより、株式購入に慎重になっている投資家に割安感をアピールして、株式購入に向かわせようという狙いもあったとされる。

   東京株式市場は9月末にはサブプライム問題への抵抗力も見せ始めている。しかし、「自社株買いは今後も引き続き伸びていく」(市場関係者)との見方は強く、年間ベースでも、過去最高だった06年度(3兆9,800億円)を上回り、4兆円の大台に乗せる可能性も高まっている。