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新種クワガタ11万円で売買 環境省が緊急規制に乗り出す

   国内で見つかった新種のクワガタがネットオークションで高値取引され、環境省が保護に乗り出す事態になっている。ネットでは、トルコの希少種クワガタが日本に持ち込まれ高値取引されたケースもあった。一時期に比べてクワガタなどの市場価格は下がっているというものの、希少種は依然人気があるようだ。

学会の関係者が出品を発見、環境省に通報

環境省が緊急指定種にしたタカネルリクワガタ
環境省が緊急指定種にしたタカネルリクワガタ

   ネットオークションにかけられていたのは、「タカネルリクワガタ」。昆虫研究者でもある横浜市の医師、井村有希氏が発見し、2007年11月の日本鞘翅(しょうし)学会で新種として発表した。1センチほどの小さなクワガタで、オスは青緑色、メスは銅色の金属光沢があるのが特徴。乱獲への懸念から生息地は明らかにされていないが、ある山系の限られた落葉広葉樹林に生息しているという。

   学会の関係者が08年1月、IT企業ディー・エヌ・エー運営の「ビッダーズ」に出品されているのを発見し、環境省に通報。同省では、希少性があることから、3月26日から3年間、種の保存法に基づく緊急指定種とし、捕獲や譲り渡しなどを禁止することにした。その間に生息状況を調査し、希少野生動植物種に指定するか検討するとしている。

   タカネルリクワガタは、オスとメス1ペアの標本が1月12日に5000円で入札開始された。その後、30人が入札に参加して値が跳ね上がり、同20日に11万3900円で落札された。どんな人物が出品したのかは不明だが、出品に際して、「同定の難しい種ですが、交尾器を見て確認しています」「(いずれ)法的規制がされ採集禁止は勿論の事、譲渡禁止になるそうです」などと紹介している。

   2月に入ってもオークションに出品され、1ペアが17日に11万1000円で落札された。出品中の12日に、「出品は当分の間、これで最後にさせていただきます」と追記があったが、3月も8万円でオークションに出された。そして、9日になって出品者によってなぜかキャンセルされている。文章表現が似ていることから、3件とも同じ出品者の可能性がある。ただ、いずれも出品の時点では違法ではない。

トルコの希少種が日本で売られる

   タカネルリクワガタは、オークション以外でも流通しているのだろうか。

   埼玉県内のクワガタ・カブト専門店の店長は、J-CASTニュースの取材に対し、「取引されているのは見たこともありませんね」と首をかしげた。

   ただ、ネットなどでは、動植物の希少種が取引されて問題となるケースが見られる。07年9月には、トルコの一部に生息し、角が3つに枝分かれしている希少種のアクベシアヌスミヤマクワガタの乱獲が問題に。共同通信が、多くは日本向けに売られ、日本のネットオークションに約4万円で出品されていると報じた。また、朝日新聞の08年3月22日付記事によると、南米に生息する大型カブトムシ約100匹を密輸しようとしたとして、大分市の買い付け業者がアルゼンチン当局に逮捕された。希少種のカブトムシは数十万円の高値で取り引きされているという。

   国が緊急指定種にした例は、ほかにワシミミズク、イリオモテボタル、クメジマボタルがある。うち、イリオモテボタルについては、J-CASTニュースの調べで、ビッダーズに石垣島産のオス1匹が9000円で出品されているのが分かった。ただ、3年間の指定期間を過ぎ、その後も希少種に指定されなかったため、環境省野生生物課では、「出品に問題はない」としている。とはいえ、珍しいホタルだけにネットで取り引きされているようだ。

   ネットで高値をつける動植物では、「黒いダイヤ」と呼ばれるオオクワガタが知られる。1999年には、最大クラスとされたオオクワガタが1000万円で売買されて話題になった。現在はどうかと、クワガタがよく取引されるビッダーズを検索すると、オオクワガタは5万円ほどの出品もあるが、ほとんどは5000円までの入札値がついていた。

   一方で、前出のクワガタ・カブト専門店のホームページを見ると、南ベトナム産のオオクワガタに約15万円の値が付いていた。国産には少なくなった大型に人気があるようだ。同店の店長は、「2000年ぐらいの当時に比べれば、値段は落ち着いてきています。といっても、ピンキリで、人気があるものはやはり高いです」と話している。