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09年3月期決算 7年ぶりの減益か

   「2009年3月期の日本企業の業績は7年ぶりに減益に陥る」――。そんな観測が急速に広まっている。急激な円高や石油などの資源高騰が輸出関連企業の収益悪化を招くとの見方が強まっているためだ。「来期の減益見通しはほぼコンセンサスになってきた」(大手証券)との声も出ている。

トヨタなら1円円高で営業利益約350億円目減り

自動車業界では海外生産を進めている(写真はイメージ)
自動車業界では海外生産を進めている(写真はイメージ)

   外国為替市場で一時1ドル=95円台まで円高・ドル安が進み、日経平均株価も終値ベースで前営業日比400円以上も急落した08年3月17日、野村証券金融経済研究所は「09年3月期の主要企業の経常損益は2ケタの減益に陥る可能性がある」との見通しを公表した。

   同研究所はそのちょうど1週間前の10日、来期の経常利益は前期比6.4%増になる見通しで、7年連続の増益になるとの予測を発表したばかりだった。しかし、米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題の余波により、国内外の経済環境が急速に変化する中、改めて為替を1ドル=95円、原油価格を1バレル=110円と想定して、再度試算を行った結果、見通しを修正したという。

   輸出関連企業を中心に、多くの企業は3月末までは一定の為替レートで予約済みとされている。このため、3月に入って以降の急激な円高が08年3月期決算に与える影響は軽微だとみられており、同期決算は6年連続の収益増の達成はほぼ確実との見方が強い。問題は、現在の円高が響いてくる09年3月期決算だ。

   日本は輸出加工産業の比重が高い構造にあり、円高は直接、企業業績に響いてしまう。同研究所によれば、1ドル=1円の円高で主要企業全体の 経常利益は0.5%減少する計算になるという。個別に見ても、トヨタ自動車なら1円の円高で営業利益が約350億円目減りするという。

「08年度は日本も景気後退に陥る可能性がある」

   為替が1ドル=100円を突破した状態のまま長期化すれば、輸出企業の業績への影響は避けられない。企業業績が悪化すれば、「08年度は日本も景気後退に陥る可能性がある」(市場関係者)との見方も現実味を帯びてくる。

   ただ、自動車や電機などの輸出企業は、80~90年代の急速な円高を教訓とした対応を進めてきており、海外向け製品の生産拠点を米国や人件費の 安い中国など海外に移転し、為替変動の影響を受けにくい体制作りに努めてきた。トヨタの場合、07年の世界生産は、海外が国内を初めて上回ったという。

   このため、かつてのような「円高不況」にはならないとの見方も強いうえ、円高により、高騰する原材料の輸入価格は抑えられるプラス面もある。しかし、「短期間で急速に進む円高の悪影響はもはや避けられない」(市場関係者)との声は少なくなく、警戒感が強まっている。