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「エコカー」向けリチウム電池 「安全面」は大丈夫なのか

   自動車大手と電機大手がタッグを組んだ「エコカー」向けリチウムイオン電池の開発・販売競争が激化している。日産自動車とNECは2008年5月中旬、09年春から量産を開始すると発表した。トヨタ自動車と松下電器産業も量産体制の整備を図り、独フォルクスワーゲン(VW)と三洋電機、三菱自動車と電池大手ジーエス・ユアサコーポレーションなどが協力体制を強化している。ただ、問題は安全面とコストだ。

次世代型エコカーの心臓部を担う

日産とNECの合弁会社がリチウムイオン電池の開発を進める
日産とNECの合弁会社がリチウムイオン電池の開発を進める

   かつてパソコン向けなどで発火事故が相次いだ。回収に追われたメーカーも少なくない。充電しすぎた場合には発火する危険性があるとの懸念は消えていない。各社は「安全性の問題はクリアした」と強調するが、ホンダなどは開発・生産に慎重な姿勢を崩していない。

   また、コストという大きな問題も残る。リチウムイオン電池の生産にはニッケル水素電池の約2倍の費用がかかるとされる。次世代エコカーで世界の優位に立つには、リチウムイオン電池の開発・生産で他社に勝るしかない。競争は日々激しさを増すが、「安全面やコスト面を解決し、広く信頼性を得るには、まだ時間が必要だ」(自動車メーカー関係者)との声があるのも事実だ。

   ただ、問題点はあるにしろ、リチウムイオン電池に対する注目度は急速に増している。

   リチウムイオン電池は、充電して繰り返し使うことができる。小型化に加え、1回の充電で長時間の使用が可能であることから、ニッケル水素電池に代わり、携帯電話やデジタルカメラ、ノート型パソコンなどに広く使用されるようになった。今や、次世代型エコカーの心臓部を担うとして、最も熱い視線を浴びる存在の一つだ。

   日産とNECは、合弁会社「オートモーティブエナジーサプライ」(神奈川県相模原市)で、2009年度には年1万3000台、11年度には同6万5000台分の量産を目指す。日産製のハイブリッド車などに搭載する予定だ。エコカーでは「プリウス」の投入で世界的に先行しているトヨタなどに遅れを取る日産は、何とか巻き返しを図りたい考えだ。

トヨタも2010年にはリチウムイオン電池搭載車を投入

   トヨタも2010年にはリチウムイオン電池を搭載し、家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車を投入すると表明している。トヨタと松下が共同出資する電池生産会社「パナソニックEVエナジー」(静岡県湖西市)は、静岡、宮城両県に量産体制を実現するための新工場を建設する方針を今月明らかにした。湖西市に建設を進めている工場と合わせると、年間100万台分に相当する生産体制が整う。

   一方、三洋はVWとリチウムイオン電池を共同開発する方針だ。両社は12年をめどに、VWが生産するハイブリッド車や電気自動車にリチウムイオン電池を搭載する計画だ。三菱自動車もジーエス・ユアサなどと電池を共同開発する合弁会社を設立、09~10年をめどに量産を目指す。日立製作所も、米ゼネラル・モーターズ(GM)が11年に北米で発売する予定のハイブリッド車に、リチウムイオン電池を供給すると発表している。