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出版不況もどこ吹く風? 環境ビジネス誌のモテぶり

   出版不況が言われる中で、最近「環境ビジネス誌」が注目されている。2007年11月に創刊した、その名も「環境ビジネス」や、08年4月から有料になった「オルタナ」といった新顔も出てきた。出版統計をとっている出版科学研究所は「環境問題に関心が集まるようになって、さまざまな環境関連雑誌が登場していることは確かです」と話す。売れ行きもよく、「環境ビジネス」という新たなジャンルを確立する勢いだ。

「環境ビジネス」「オルタナ」といった新顔も登場

   地球温暖化や二酸化炭素(CO2)排出量の削減といった文字がマスコミに登場しない日はないが、出版科学研究所によると、環境ビジネス誌というジャンルはなく、環境専門誌として分類しているのが現在6誌。発行部数で9000部から1万部ほど。「月刊 地球環境」(日本工業新聞社)や「環境と公害」(岩波書店、季刊)などは専門的で、ふつうのビジネスマンが読むにはちょっと苦労する。そんな市場に、「環境ビジネス」や「日経エコロジー」といった「やさしい」環境ビジネス誌が登場している。ほかに専門誌2誌があるが、「オルタナ」は含まれていない。

   出版科学研究所は、「地球環境が世界的な問題としてとらえられ、企業から注目されていることもあって、雑誌の特集企画も増えています。ただ、分類上は、たとえば『ソトコト』は総合誌ですし、女性向け環境雑誌の『ecocolo』は女性誌に分類しています。ここ数年で環境関係の雑誌が広がってきていることは確かですが、統計的には、まさにこれからジャンルを確立しようといったところでしょう」と話す。

   日経BP社の「日経エコロジー」の創刊は1999年で、学術誌や業界誌を除く環境雑誌のなかでは老舗的な存在になりつつある。2007年の発行部数は約1万6000部。「今年は前年を若干上回るペースで増えていて、部数は堅調に推移しています」(神保重紀編集長)という。企業経営者や環境管理担当者などを読者とした環境対策と環境ビジネスに関する専門情報誌として、「単なるブームに乗るのではなく、日本企業の競争力の向上につながる、有益な情報を冷静に伝えたい」と話す。

   「世界初の環境ファッション・マガジン」という「ソトコト」も創刊は99年。「ゴミ捨てるなよ!」を合い言葉にスタートし、スローフード、スローライフ、ロハスといった時代のキーワードを前面に打ち出しながら、「家庭でできるカーボンニュートラル」などのテーマを設定し、読者と行動をともにする企画で根強いファンを獲得していったようだ。

   この1年では、「環境ビジネス」が07年11月創刊。日本ビジネス出版が発行しているが、はじまりは03年8月に遡る。当時は宣伝会議が発行していたが、それを昨年11月に分社化して発行。現在の発行部数は4万5000部だ。

   2007年3月にフリーマガジンとして創刊した「オルタナ」は、1周年を迎えて4月号から有料化。2万人に配送していたものを、書店売りに変更。いま全国500の書店で販売している。発行部数は1万5000部。来春の月刊化をめざしている。

「環境」だと、企業も広告出しやすい?

   「オルタナ」の森摂編集長は、「環境雑誌ではない」と強調する。「20世紀の企業が売り上げや経常利益といった経営指標を重視してきたとしたら、21世紀の企業はそれプラス、環境や社会貢献、消費者の健康や従業員にやさしい経営といった新たな価値観が大切になる。だから、『オルタナ』は環境問題や社会的責任(CSR)にフォーカスしたビジネス誌なんです」と説明する。環境雑誌が取り上げがちなロハスのようなライフスタイルを提案する企画とは一線を画す。

   環境ビジネス誌の読者は、30歳代以上のビジネスマンが多い。しかし、男性は若干多い程度で、女性の読者もほぼ半数を占める。ある環境雑誌によると、「大手企業や研究所などに勤める人が結構いて、年収ベースでも800万~1000万円の人が3割くらい」という。

   新聞・雑誌の広告収入が下降線をたどるなかで、環境ビジネス誌は広告も集まりやすいといわれる。企業には、広告掲載を通じて「環境問題に熱心」「環境にやさしい」企業をアピールする狙いがあって、環境ビジネス誌への露出は、「企業の環境問題やCSRの考え方を伝えやすい」(出版科学研究所)という。さらに、国や環境省などが開く環境関連イベントや、企業のWEBとも連動しやすいことがあるようだ。

   前出の「日経エコロジー」、神保編集長は「企業は最近、主に一般消費者向けの環境広告やキャンペーンに積極的に取り組んでいます。ただ、弊誌はあくまで専門誌ですので、一般消費者というよりも、一般企業を顧客とする廃棄物処理業のような企業広告が若干増えています」と話す。

   企業の後押しも手伝って、当面は「環境ビジネス誌」ブームが続く気配だ。