J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

国会議員の海外出張 若手議員がファーストクラスに「待った」

   国家公務員の「居酒屋タクシー」利用やマイレージの私的利用が問題化するなか、国会議員の国外出張にもスポットライトが当たりつつある。若手議員が、「ファーストクラスをやめてビジネスクラスにすれば経費が削減できる」との呼びかけを行ったのだ。もっとも、地方議会や中央官庁の官僚のレベルでは、ファーストクラスを使える層は、かなり絞られてきており、国会でもこの流れに追随することになるのか、注目が集まりそうだ。

ビジネスに落とせば年間5000万円浮く

ファーストクラスをめぐる議論は続きそうだ(写真はイメージ)
ファーストクラスをめぐる議論は続きそうだ(写真はイメージ)

   国会議員は、国会の派遣で海外出張する際には、「最上級の運賃」が支払われることになっており、ファーストクラスの利用が認められている。

   航空運賃は、もちろん会社によって異なるが、正規運賃で比較した場合、ビジネスクラスはエコノミークラスに比べて2~3割高く、ファーストクラスは約2倍かかる。もっとも、これは正規運賃を基準に比較した場合なので、民間で一般的に使われている格安航空券と比較した場合は、その「格差」は、さらに広がることになる。こんな現状に、若手議員が異議を唱えているのだ。

   自民党の若手国会議員でつくる「税金の無駄遣いを一円たりとも許さない若手の会」は08年6月13日、「無駄の徹底的排除」を行うための中間提言を発表した。提言の中では、議員定数の削減、特別会計の廃止、天下りの禁止、「無駄遣い取締官」の創設、などが盛り込まれたが、ファーストクラスの利用についても検討対象とされた。

   「若手の会」メンバーの牧原秀樹衆院議員は、記者会見で

「現在、国会の委員会出張はファーストクラス正規料金で行っているんですけれども、それを仮に、仮にですけれども、ビジネス(クラス)に落としただけで、(衆参あわせて)年間5000万円ぐらいの割り引きになる、と」

と、改革の意義を強調した。

   「国会議員はファーストクラスが当たり前」というのは、一般的な感覚からはかけ離れているとの声も上がりそうだ。一方、「居酒屋タクシー」が問題化した中央官庁職員や、地方議会レベルでは、若干事情が異なるようなのだ。

国家公務員でファーストクラス利用は次官級

   例えば、国家公務員が海外出張する際は、ファーストクラスが利用できるのは次官級に限られる。ビジネスクラスを利用できるのも、課長級以上か、8時間以上搭乗する課長補佐のみだ。00年の法律改正以前は、全職員にビジネスクラスの使用が認められていたほか、本省の部長級以上であれば、ファーストクラスの利用ができた。

   一方、地方議会に目を向けると、97年には、東京都や神奈川県議会で、ファーストクラスの運賃を受け取っておきながら、実際にはビジネスクラスやエコノミークラスにしか乗らず、その差額を通訳料などに流用していたケースが問題化。神奈川県では、利用できる航空運賃の額が、ファーストクラスからビジネスクラスに改められた。

   それ以外にも、神戸市では02年にファーストクラスでの海外出張が市民オンブズマンに問題視され、利用する運賃をエコノミークラスに改めるよう申し入れが行われている。特に利用する航空券の種類を定めない場合でも、出張費用の上限が決まっているケースが多く、実際上は「ビジネスまたはエコノミークラス」というのが、地方議会では一般的なようだ。

   そうは言っても、民間では、上場企業であっても「部課長はエコノミーが当たり前、役員でも基本的にはビジネスクラス」との声も多い。そう考えると、「官民格差」は依然として残っているともいえ、今回国会で上がった「物言い」への「追い風」が、今後強くなる可能性もありそうだ。