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議決権行使する個人株主が増える シャンシャン株主総会の終焉

   2008年3月期決算企業の株主総会は6月27日にピークを越えた。08年は、現役社長を含む取締役選任案が、筆頭株主の米投資ファンド、スティール・パートナーズなどによって否決された、かつら大手のアデランスホールディングスに象徴されるように、ファンド側の要求がどこまで通るかが焦点だった。経営陣と投資ファンドの攻防は、概ね、経営陣の勝利に終わった形だが、個人投資家が自らの意思で議決権を行使するケースが増えており、経営陣の意向通りに運ぶ株主総会は過去のモノになりつつある。

経営改善できない取締役の再任に反対する動き

   今年注目されたのは、Jパワー(電源開発)と、英投資ファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド(TCI)の対立。TCIは、増配や社外取締役の選任、さらに中垣喜彦社長の再任に反対を表明していた。TCIのアジア代表、ジョン・ホー氏は、自らの株主提案が可決されることに自信を見せていたが、株主総会の決議では、TCIの要求はすべて退けられた。

   TCIだけではなく、ファンドが取締役選任案に反対していた日本興亜損害保険NECエレクトロニクスでも、会社案が可決され、ファンドは勝利できなかった。

   しかし、会社側の議案がシャンシャンで可決される株主総会は姿を消しつつある。大手資産運用会社は、取締役選任案や買収防衛策導入を決議する際の議決権行使の基準を厳格化。経営改善ができない取締役の再任に反対する姿勢を鮮明にしている。国内運用会社の担当者は、「経営指標の悪化などの動きだけで直ちに再任に反対するわけではないが、改善が見込めないような取締役選任案は厳しくチェックする」と強調する。

   野村証券金融経済研究所の調査では、議決権を行使する個人株主が増えている。ある外資系投資ファンドは、「かつてはハゲタカのイメージが強すぎたが、こちらの主張を丁寧に説明すれば個人株主が味方してくれるケースが増えている」と手応えを感じていると話す。

アデランスは「ファンドの意向をくんだ人事」

   これまで、日本型経営の特徴の一つとされる株式持ち合いによる安定株主工作で、経営者は一般株主をほとんど意識しないでやってこられた。しかし、時価会計の導入などによって、金融機関、取引先やグループ企業による強固な株式持ち合いが崩れた結果、「万全の安定株主を築ける持ち合いは難しくなっている」(大手証券)。

   そんな中で、ファンドに「完敗」したのがアデランス。6月30日、岡本孝善社長が特別顧問に退き、完全子会社の早川清社長が新社長に就任し、スティールからも新たに社外取締役を迎える人事案を発表した。「ファンドの意向をくんだ人事」とみられている。

   今年の株主総会は、アデランス以外でファンドが明確に勝利を収めた企業はなかったが、証券業界では、「議決権行使に対する個人株主の意識の高まりもあり、ファンド側が個人株主を取り込めれば、会社側提案が否決されるケースは増えてくる」(証券系シンクタンク)という見方が強まっている。