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「国策融資」から「投資ファンド」へ 政策投資銀行生き残れるか

   2008年10月の政府系金融機関の再編を控え、民営化される日本政策投資銀行が、従来の「国策融資」から「投資ファンド」への脱皮を探っている。業務内容の転換で生き残りを図るが、このほど発表した08年3月期決算は米低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)関連で300億円超の損失を計上するなど民営化に向けた課題は多い。

旭ファイバーグラスやブックオフに「投資」

   政投銀は投資事業の強化を急いでいる。07年9月には旭硝子の断熱材生産・販売子会社、旭ファイバーグラスを買収し、08年3月は古本販売大手ブックオフコーポレーションの株式約15%を取得して筆頭株主になった。

   旭ファイバーは断熱材市場で国内トップ。政投銀は同社の株式公開を目指す。急成長したブックオフは不正経理問題でつまずいたため、政投銀が再建を支援している。ともに政投銀が「民営化後の収益の柱」と位置付ける投資業務の試金石となる案件だ。

   政投銀は政府が保証する債券を発行し、低利で資金を調達してきた。だが、民営化で政府保証が外れ、調達コストの上昇は必至。「収益力向上が至上命題」(幹部)だ。

   従来の政投銀は主に電力や鉄道などのインフラ整備に資金を貸し出してきた。しかし、経営不振に陥った日本航空向けなど「国策」に沿った採算性の低い融資も目立つ。「従来型の融資を圧縮し、高収益の投資事業を拡大」が、政投銀の描く民営化後の青写真だ。

   民間銀行は一般企業の株式を5%までしか保有できないが、政投銀には出資比率の規制はなく、この特色を生かしたい考え。政投銀は、5~7年後の完全民営化時点で投資額を現状の約3倍の5000億円程度に増やし、税引き前利益も約1300億円に倍増させたい計画だ。

「投資業務に独自のノウハウがあるのか」

   しかし、投資業務は外資系などとの競争が激しく、「政投銀に独自のノウハウがあるのか」(大手行幹部)との疑問は根強い。「政策金融の側面がなくなると居場所を失うのでは」との指摘すらある。

   また、これまでは財務省の天下りポストだった政投銀総裁には、元伊藤忠商事社長の室伏稔氏(76)が07年10月に就任した。民間経営の手法を浸透させることが期待されているが、「高齢でどこまで指導力を発揮できるのか」と不安視する向きもある。

   さらに、08年3月期決算ではサブプライムローンに関連した証券化商品などの価格下落で338億円の損失を計上した。最終(当期)利益も前年同期比30%減の526億円にとどまり、民間金融機関としての収益力も問われている。

   政府は政投銀を10月に株式会社化した後、政投銀の株式を順次売却し、最終的には資本金など純資産に見合った1兆9000億円程度の収入を見込んでいる。「火の車」の財政を少しでも潤したい考えだが、政投銀が収益基盤を構築できなければ、株式が狙い通りの額で売却できず、政府のシナリオも崩れかねない。