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異常に安いヘルパーの賃金 「月10万円未満」が7割 

   全国で12万人を超すというホームヘルパーは、介護を通じて高齢化社会そのものを支えているといってもおかしくない。ところが月収「10万円未満」が7割と異常に劣悪な労働条件下におかれている。しかも不安定な仕事だ。このままだと、ヘルパーのなり手が減り、後継者難から制度そのものが崩壊しかねない。

介護業務にあたった時間だけ賃金が支払われる仕組み

   ホームヘルパーや訪問介護事業者ら約130人が参加した「全都ヘルパー集会」が2008年7月6日に行われた。その中で、事業所に登録し、パートタイムで働く「登録型ヘルパー」の7割が、月収10万円未満という驚きの調査結果が報告された。全国ホームヘルパー連絡会副代表で、ケアセンターかりぷもみじ台のセンター長を務める笹原裕美氏は、

「意義や、やりがいがあっても、10万円にも満たない給与では生活ができない。ワーキングプアと化した業界の中でもヘルパーの賃金の低さは異常だ」

と訴えた。

   以前から介護従事者の給与相場は低いと言われていたが、これほど安いとはあまり知られていない。厚生労働省が実施した「賃金構造基本統計調査」をもとに試算したところ、登録型ヘルパーなど非正社員ヘルパーの月給はおよそ8万円。一方、正社員の場合は税込み21万3100円(残業代を含む)と報告されているが、実態は「圧倒的に非正社員が多い」という。

   非正社員の給与が安い理由は、賃金体系にある。基本的には介護業務にあたった時間に賃金が支払われる。ただ、依頼主の家に出向いて仕事をするため、移動時間がかかったり、1日に複数の家を回る場合は空き時間も発生したりする。厚生労働省は訪問介護労働者の法定労働条件の確保について規定を設け、通勤を除く移動時間は業務とみなすよう事業所に求めている。

「拘束時間が長いわりに、安い」

   しかし、実態は事業所任せになっていて、支払額の上限が定められ、完全には支給されていないようだ。空き時間については、厚労省は「自由利用が保障されている限り、労働時間として取り扱う必要はない」としており、賃金は支払われない。ただし一度事業所に戻れば、空き時間も業務としてみなされるという。一方で、30分や1時間の空きでは事業所に戻れず、結果的に賃金が支払われない。公園やデパートの待合室で時間をつぶし、時間を持て余すのが現状なのだ。そのため、「拘束時間が長いわりに、安い」という声が上がっている。

   さらに、直前に予約を取りやめる「ドタキャン」もよく起こる。介護を必要とするような高齢者の場合、急に病院に行くといった事態が起こりやすい。そのため、予約日の前夜までに連絡を入れれば、キャンセル料を支払わなくてもいいとする事業所もある。利用者にとっては大助かりだが、ヘルパーには賃金が支払われないことが多い。キャンセルの場合も賃金の6割を保証するよう介護従事者の支援団体は求めているが、いまだ半数近くのヘルパーが支払われていないのが現状だ。