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「ぬれ煎餅」銚子鉄道2年連続黒字 「観光鉄道」へ転換図る

   資金難から経営危機を迎えている銚子電鉄(千葉県銚子市)だが、ウェブサイト上で「ぬれ煎餅」の購入を呼びかけたところ注文が殺到し、あっという間に全国的に知られることになった。乗客も増え、会社全体としても、2年連続での黒字を記録した。だが、設備の更新などが目前に控えており、まだまだ予断を許さない状況だ。利用客の多くが観光客だということから、今後は「観光鉄道」として生き残りを図りたい考えだ。

「ぬれ煎餅」で前年度比194%増の9812万円の利益

銚子電鉄は「観光鉄道化」に活路を見出している
銚子電鉄は「観光鉄道化」に活路を見出している

   銚子電鉄をめぐっては、2006年には前社長が1億円以上の借入金を横領したとして逮捕され、地元自治体の支援停止や金融機関の融資凍結を招き、経営危機が決定的なものとなった。06年11月には、車両の検査が行えなくなるという事態に陥り、ウェブサイト上に「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」との文言を掲載、全国に助けを求めることになった。これが奏功して、煎餅の注文が全国から殺到。煎餅工場はパンク状態になった。

   それでも、踏み切りや枕木などの設備に不備があり、関東運輸局から事業改善命令を受けたことから、07年1月には支援団体「銚子電鉄サポーターズ」が発足。募金活動などをとおして支援を続け、07年4月には枕木交換費用として970万円を、08年5月には踏切看板設置費用として640万円を贈った。

   この成果は着実にあがっている様子で、08年7月に同社が発表した07年度の決算によると、利用者は前年度を16%以上も上回る82万9793人。鉄道部門は1470万円の赤字だが、06年度の5965万円に比べると4分の1にまで減少している。一方、毎年のように黒字を続けている「ぬれ煎餅」を中心とする副業に目を転じると、07年度の損益は前年度比24%増の1億1553万円。会社全体としても、前年度比194%増の9812万円の利益が上がっており、2連連続の黒字を記録している。

首都圏からのバスツアー客が11万人

   いわば、「副業である煎餅が本業の鉄道の赤字を穴埋めして、なんとか延命している」という構図だが、まだまだ課題も多いようだ。銚子電鉄は車両設備が全般的に老朽化しており、08年度中に1編成を新しい車両に更新しないといけないのだという。この作業には、およそ8000万円がかかると見られており、利益の大半が吹き飛ぶ形だ。それ以外にも、安全確保のための工事を多数発注する必要があり、多額の費用負担が見込まれている。

   このように、危機的な状況に変わりはないのが実際のところだが、銚子電鉄では、今後の活路を「観光鉄道化」に見出したい考えだ。

   前出の07年度の乗客数約83万人のうち、実は首都圏からのバスツアー客が11万人に達しているのだ。ツアー以外の観光客を考えると、乗客のうちのかなりの割合を観光客が占めるとみられる。さらに、定期券の利用客が減少を続けていることから、「地域の足」として伸びる余地は少ないと見ている模様だ。

   銚子電鉄では、

「鉄道があってこそのぬれ煎餅。鉄道に乗っていただいて、喜んで帰っていただければ、と思っています」

と、「稼ぎ頭」である煎餅と本業の鉄道とは、切っても切れない観光資源としてアピールしていきたい考えだ。