J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

破たんで社員持ち株が紙くずに リーマン社員の「天国から地獄」

   破たんしたリーマン・ブラザーズ証券には、社員報酬を一部、自社株で支払う制度がある。仕事のモチベーションを高めるためだが、それが破たんで紙くず同然となる悲劇を生んだ。中には、億円単位で財産を失った社員もいるようだ。海外では、自虐的になった社員が、社名ロゴ入りグッズをネットで売り出すケースも出ている。

「ハイリスク・ハイリターン」年収1億日本人社員も

イーベイ出品のリーマン・グッズの数々
イーベイ出品のリーマン・グッズの数々
「数か月前に首になったリーマン社員は、『すごくラッキー!』と喜んでいます。残っていれば、持ち株の価格がゼロだったわけですから」

   ある外資系金融機関の幹部は、知り合いの元社員の話として、こう明かす。

   破たんした米証券大手のリーマン・ブラザーズでは、社員報酬の一部を自社株で支払う制度があり、リーマン株の3割は社員が保有している。これは、日本法人のリーマン・ブラザーズ証券も同じだ。元社員の喜びは、裏を返せば、多くのリーマン社員にとっては、悲劇だったことを意味する。

   同社によると、社員持ち株制度は、株主として会社の価値を高める意識を持ってもらい、同時に長くいてもらおうと考案した。ただ、持ち株を売るには条件があり、社員は簡単にはできない。同社では、条件の内容は言えないとしているが、関係者によると、受け取りから数年後か、退職、住宅購入などの場合に限られるという。

   元社員は、退職後に持ち株を順次売り、損失を免れていた。

   関係者によると、リーマンには、税率の有利さから、ボーナスの一部を退職時に後払いする制度もある。元社員は、解雇による数千万円の割り増し退職金とともにボーナスの一部後払いも受け、億単位の金を受け取っていた。知り合いの外資系金融機関幹部は、「残っていたら、まったく別のシナリオだった」と話す。

   とはいえ、この幹部は、社員の悲劇について、「あまり同情できない」と漏らす。投資会社は、リーマンのように雇用が不安定だと年収が高い傾向があり、「ハイリスク・ハイリターン」の世界だからだ。元社員も、首にはなったが、年収が1億円にも達していた。

ロゴ入りグッズ、続々ネットでオークション

   もっとも、ハイリスクの世界とはいえ、リーマン社員には、突然の損失に対するわだかまりもあるようだ。

   米ネットオークション「イーベイ」では、なんと社員が使っていたとみられる社名ロゴ入りグッズが次々に売られているのだ。例えば、ロゴ入りのダッフルバッグを出品したアメリカ人は、「歴史の一部をその手にできるチャンス」と自虐的なメッセージを添えた。08年9月17日夕には、5人が入札し、4623円の値が付いていた。

   このほか、ロゴ入りのマグカップや帽子、ボールペンなど400件以上が出品されている。中には、なぜか「リーマンの破たん」の英文を入れたドメイン名まで売りに出され、出品から9時間後には、10万円以上の値が付いた。ただ、日本人の出品はほとんどないようだ。

   リーマン・グッズの出品について、前出の外資系金融機関幹部は、「社員の連帯感を高めるために、文房具やタオルなどのロゴ入りグッズはいっぱいあります。世界で、リーマンファミリーの意識を高めてもらうためです。そんなグッズを売る背景には、経営が悪いのに、なぜ自分が首になるのかという不満があるのでしょう」と話している。

   さらに、海外では、破たん直後に、段ボール箱やスーツケースなどに持ち物を入れて会社から運び出す光景が報じられたが、この幹部は、「このケースは、不満とはちょっと違うと思います。破たんすると社員が入れなくなるのを見越して、持ち出したのでは」としている。

   一方、社員の今後の扱いについて、リーマン・ブラザーズ証券の広報担当者は、「日本で約1300人いる社員は、解雇してはいません。支援先を探しており、今はまだ見通しが立たない段階です」と話している。