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「チベットで『文化虐殺』起きている」 ダライ・ラマ対話路線に「行き詰まり」

   来日中のチベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世が2008年11月3日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた。チベット独立を目指すことについては否定的だったが、「完全な自治」を求める従来の立場を繰り返した。一方、「中国当局への信頼感は少なくなってきている」としたうえで、チベット自治区の「中国化」を念頭に、「一種の『文化虐殺』が起きている」と述べるなど、現状への危機感をにじませた。

「代わりのやり方を求めていく必要がある」

ダライ・ラマは、中国への失望感をあらわにした
ダライ・ラマは、中国への失望感をあらわにした

   ダライ・ラマは、

「チベットは分断されている。チベットの文化・言語などを守っていくことが重要だ」

など述べた上で、「独立」ではなく「完全な自治」を求めていく立場を繰り返した。一方、08年3月にチベット暴動が起きて以来、現地での状況が改善されないことを念頭に、

「事態は悪化している。チベット内部では、多くの兵力が駐留しており、これが疑念を呼んでいる」
「チベットは『死刑宣告』を受けたようなもの。中国への信頼が、だんだん先細りになっている」

と、失望感をあらわにした。

   さらに、

「誤りは受け入れないといけない。代わりのやり方を求めていく必要がある」

とまで述べ、これまでの対話路線に「行き詰まり感」が出ていることを示唆した。その上で、11月17日にインドのダラム・サラに亡命チベット人を集めて開かれる会議に、今後の方針を委ねていきたい考えを示した。

   10月25日には、「中国指導部に失望した」と述べたばかりで、これをエスカレートさせた形だ。

チベット民族が少数者になった場合、文化を守ることが難しい

   会場からは、中国建国後に「中国化」が進んだ旧満州やモンゴルの例をひきあいに、

「完全な自治の実現は難しいのでは」

との指摘が出た。内モンゴル自治区では、モンゴル人より中国人の方が多くなっていることを念頭に、ダライ・ラマは

「(チベットという土地でチベット民族が)少数者になった場合は、文化を守ることが難しいだろう。言語も、中国語になってしまうだろう。意図的にせよ意図的でないにせよ、一種の『文化虐殺』が起こっている」

と懸念を表明。

「広い視野からすると、まだ希望を持っている」

としながらも、厳しい見通しを明らかにした。

   ダライ・ラマは福岡県仏教連合会の招きで10月31日に来日。北九州市や東京で講演し、11月7日まで滞在する。