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自殺に使われた「ムトウハップ」製造中止 「やめないで」存続望む声続々

   「硫化水素ガス」自殺の原料に使われた入浴剤の製造が中止されたことが明らかになったが、製造元には700人以上の愛用者から「やめないでほしい」という声が寄せられている。ネットでも、「残念だ」「なくなる前に買い占めないと」などといった意見が書き込まれている。

「なくなれば死活問題。在庫がある限り売ってほしい」

   入浴剤と洗浄剤を混ぜ合わせて「硫化水素ガス」を発生させ、これを吸って自殺する事件が2008年に急増したが、毒ガスを発生させるのに使われた入浴剤「六一〇ハップ(ムトウハップ)」の製造会社、武藤鉦製薬(愛知県名古屋市)が製品の製造を2008年10月末日で中止していた。

   「ムトウハップ」はイオウ、生石灰、カゼイン、硫化カリウムを浄水に過熱溶解し、ろ過した医薬品の入浴剤で、疲労改善、アトピーや皮膚病にも効果があると言われ、長年、愛用している人も多い。80年前から作り続け、最近は年間50万本を出荷していたが、自殺に使われてから取扱店が激減した。

   ところが、店頭から姿を消すと、愛用者から存続を望む声が多数寄せられるようになった。同社には700人以上から、「やめないでほしい」「どこで買えるのか?」などという電話がかかってきた。また、シルバーアクセサリーを作っている業者が「いぶし銀」の加工に使っていて、「なくなれば死活問題。在庫がある限り売ってほしい」という問い合わせが複数きている、という。ネットでも、「ずっと使っていた。なくなる前に買い占めないと」「重宝していたのに、残念だ」などという意見が書き込まれている。同社は、「できるだけ多くの人の要望に応えたい」として、在庫がある限り販売する。

工場の従業員のうち、すでに半数以上が退職

   日本チェーンドラッグストア協会は08年5月、加盟店舗に「ムトウハップ」の販売を自粛するよう要請した。販路の8割を占めていた薬局やドラッグストアで扱われなくなり、売上げはがた減りする。さらに「amazon.com」などの通販サイトでも取り扱いをやめた。薬局での販売規制は7月に解除されたが、武藤鉦製薬の社員は、こう嘆く。

「解除から数か月経った今も、8割の薬局が商品を扱ってくれません。中にはお客様に対し、弊社が『倒産した』とか『厚生労働省から売ってはいけないと言われている』などという、いい加減な説明をしている店もあったようです。協会が解除したことや、その理由を全会員にきちんと伝えてくれていたらよかったのですが」

   社員によると、十数人いた工場の従業員のうち、すでに半数以上が退職した。在庫整理や返品対応で09年中は会社を存続させるが、「その後はわからない」としている。