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シティは日本で次は何を売るのか 日興コーディアル?日興シティグループ?

   深刻化した金融危機で経営が悪化した米金融大手シティグループのリストラが、日本事業に波及した。傘下の日興シティ信託銀行の売却先を決める入札を2008年12月1日に実施するなど、日本事業の縮小に動き始めたのだ。シティが再建への道筋を描き切れていないだけに、日本の金融・証券業界では、個人向けの日興コーディアル証券など中核事業の売却観測も浮上している。

証券業界では「次の大胆なリストラ策」が注目の的

   日興シティ信託銀売却案件の入札に応じたのは、三菱UFJ信託銀行、住友信託銀行、みずほ信託銀行の3行。売却先は来年初めに決まる見通しで、売却額は数百億円規模とみられている。

   シティは08年1月、日興コーディアルグループ(日興CG)を完全子会社化。日本をアジアの中核拠点と位置付け、銀行、証券、カードなど総合金融サービスを展開する戦略を描き、5月には日興CGとシティ日本法人の両持ち株会社を合併させ、新たに「日興シティホールディングス(HD)」を発足させた。

   だが、サブプライムローン問題や金融危機の拡大を受け、シティの経営は悪化。08年7~9月期決算は28億1500万ドル(約2800億円)の大幅赤字を計上。11月までに総額450億ドル(約4兆3000億円)の公的資金による資本注入を受けた。

   シティは、公的資金の見返りに米政府から大規模なリストラを迫られているとみられ、日本でも、日興シティ信託銀の売却のほか、日興コーディアル証券で希望退職の募集を開始するなどリストラに着手した。このため、証券業界では「次の大胆なリストラ策」として、日興コーディアル証券、法人向けの日興シティグループ証券、資産運用の日興アセットマネジメントの事業会社の売却観測が急浮上している。

日興コーディアル証券は「売却はあり得ない」と強く反発

   これに対し、日興コーディアル証券は「日本はシティのアジア戦略にとって重要。中核事業の売却はあり得ない」(幹部)と、強く反発している。売却観測に拍車をかけた日興シティ信託銀についても「前から検討していた案件で、シティの経営悪化とは関係ない」と火消しに躍起だ。それでも売却観測が沈静化しないため、日興シティHDのダグラス・ピーターソン会長兼社長は12月2日に、わざわざ「日興コーディアル証券など中核事業を売却する考えはない」とのコメントを発表したほどだ。

   ただ、日本の証券業界は、こうした発言を額面通りに受け取ってはいない。「日興シティHDが売却を否定しても、米本国のシティの決断によって売却されるシナリオは消えない」(大手証券役員)からだ。しかも、日興コーディアル証券などが売り出されれば、「証券業務の拡大を狙う三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、みずほFGなどが黙っていない」(大手証券)とみられる。大手証券幹部は「証券会社にとっても、日興の顧客基盤、営業力は魅力」(大手証券幹部)と指摘したうえで、「売り出されれば、買い手に名乗りを挙げる」と言い切る。

   リストラに苦慮するシティの姿によって、日本の金融・証券の再編が動き出しそうな雰囲気が強まっている。