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マスコミ報道では分からない内実 日本郵政年金便放置の深刻

   日本郵政グループの郵便事業会社が「ねんきん特別便」を含む約12万通の郵便物の入ったコンテナ1台を大阪市のJR貨物・梅田駅に2カ月間放置していた問題が波紋を広げている。郵便事業会社は2008年12月2日夕、緊急会見を開いて「郵便物残留事故の発生」と題する発表を行った。翌3日には自民党本部で「郵政事業に関する検討・検証プロジェクトチーム(PT)」(中谷元座長)が開かれ、日本郵政の西川善文社長がヒアリングを受けた。しかし、この席で西川社長は放置問題について自ら釈明せず、自民党国会議員の間からは「日本郵政の危機意識が足りない」との声が漏れた。

社会保険庁は11月中旬、未配達の事実を連絡していた

   今回の未配達問題は、マスコミの報道では伺い知れないほど、内実は深刻だ。新年の年賀状がアルバイト配達員の怠慢で配達されなかったなどというトラブルは、これまでも発生していたが、今回は本質的にレベルが違う。郵便事業会社の組織面の資質に関わる問題が内在しているからだ。事態を重くみた総務省は、同社に経過報告と原因究明、再発防止策などを求める報告請求を行った。総務省は報告内容によっては、監督官庁として業務改善を求めることになる。これは「異例の事態」(同省)だ。

   コンテナ内に2カ月間も放置された約12万通の郵便物の中には、4万5000通の「ねんきん特別便」が含まれていた。9月下旬に発送した特別便が届かないことから、社会保険庁は11月中旬、未配達の事実を郵便事業会社に連絡し、事実確認を求めていた。しかし、同社は2日夕の担当常務の会見で「社会保険庁からそういう話は聞いていなかった。調べた結果、ねんきん特別便があるということで、私どもから社会保険庁へ『こういうものがあった』と連絡した」と公表していた。この発言に驚いたのは、社会保険庁だったのは言うまでもない。

危機感の薄さ、当事者能力の欠如を指摘する声も

   この危機感の薄さ、当事者能力の欠如ゆえに、郵便事業会社は2カ月間も郵便物を放置していても気付かなかったのだと言われても仕方ない。翌3日の自民党PTで、西川社長から釈明の一言もなかったのは、その表れと批判されてもおかしくない。関係者の間では「日本郵政として今回の未配達問題は、郵便物の輸送を委託した運送会社の問題と見ているのではないか。日本郵政としては、むしろ被害者意識が強いのではないか」の声も漏れる。

   今回の郵便物の輸送は、下請けの運送会社とJRを使うルートで、郵政公社時代から何も変わっていない。日本郵政としては「郵政民営化の弊害」などと言い訳できない点にも留意する必要がある。人災ともいえる今回の事故を反省し、具体的な原因究明と再発防止策をとれるのか否か。それが示されない限り、安心して年賀状など投函できないとの声が噴出しそうな失態だ。