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市立岐阜商の立命館「移管」 「100年に1度のチャンス」挫折の原因

   岐阜市の市立岐阜商業高校を廃止し、学校法人・立命館に移管する計画が市議会で不採択となり、計画を推進してきた細江茂光市長(60)が辞任を表明して、市長選で「民意」を問う異例の事態に発展した。岐阜商高は、市の財政難や商業高校としての役割などから「廃止もやむを得ない」状況に陥っている。そこに中部地方に拠点をつくりたい立命館の思惑が重なり、市長も立命館からの「移管」の提案を「100年に1度のチャンス」と表現していた。

校舎の建て替えに10~30億程度かかる

   岐阜市の市立岐阜商業高校を廃止し、立命館に移管する計画で、岐阜市議会は2008年12月11日、計画推進を求める請願を不採択とする一方、計画の反対派が提出していた同校の存続請願が賛成多数で採択された。

   立命館への移管をめぐっては、「岐阜商高を廃止すべきなのかをまず議論すべきで、移管は本末転倒だ」といった意見が反対派から噴出していた。計画の不採択を受けて、細江茂光市長は同日に辞任を表明。「立命館の誘致について民意を問いたい」と話しており、09年1月の市長選に出馬し、「移管」問題の是非を民意に問うことになりそうだ。

   岐阜商高をめぐっては、市教育委員会が2008年3月に「市岐商(岐阜商高)を取り巻く状況を考えると、廃止も止むを得ない」として、廃止の方向で検討を進めることを決定。06年11月と07年2月に立命館から「移管」の提案があり、岐阜商高を立命館大の付属校として「移管」する案が浮上。市長も立命館からの「移管」の提案を「100年に1度のチャンス」と表現し、推進していた。

   岐阜商高は1969年設立で、甲子園にも4回出場した野球の強豪校。そして、唯一の市立高校だ。市教育委員会はJ-CASTニュースに対し、廃校する方向で検討を進めることになった経緯について、

「公立の高等学校については、県や学校法人にお任せする方向になっているほか、校舎の耐用年数も考えると建て替えも行わなければならない。それに10~30億程度かかるという財政的な問題がある。また、商業高校という創設時の趣旨から考えても存続していく積極的な理由がない」

と説明する。岐阜商高の場合、生徒の半数が岐阜市外からの生徒のほか、半数以上の生徒が岐阜市外に就職する。10年後以降に岐阜市内の15歳人口が大幅に減少することが予想されるほか、岐阜商高の運営には年間4億円もかかり、財政難の市には大きな負担になっているという現状もある。しかし、「廃校」には地元からの反発もあり、廃校に反対する18万人の署名も寄せられた。

100パーセント立命館大へ進学できる

   一方で、立命館にも今回の「移管」にはメリットがある。今回の岐阜商高の「移管」の提案の狙いについて広報課は、「岐阜市の活性化のお手伝いができれば」とするほか、「立命館大学への志願者も多い地域で、ニーズにもお応えしたい」と話しており、中部地方に拠点を作ることで大学ビジネスを広げたいという思惑もあるようだ。

   立命館は2006年に滋賀県守山市の公立高校を立命館守山高校に移管した実績も持つ。08年8月には、立命館の理事長が岐阜市で説明会を開き、「100パーセント立命館大へ進学できる高校をつくるのが目的」と話し、市民向けの公開講座を開設するなど移管のメリットを市議らに説明していた。

   立命大といえば関西の有力校。市教育委員会などでは、教育に熱心な世帯を地元に取り込める、名古屋圏からの通学者も見込める、といったメリットも見込んでいた。フジテレビ系情報番組「とくダネ!」が岐阜駅前で50人を対象に行ったアンケートでも、立命館への移管について、賛成とする意見が36人に上り、反対とするのは14人という結果だった。

   立命館は、細江市長の辞任表明について、

「予想外のことであり、まことに驚いております。私どもとしては当面は事態の推移を見守りたいと考えております」(広報課)

とするコメントを発表。ある市関係者も、

「都会の方は(今回の不採択について)どう思います?テレビでも『もったいない』って言ってたでしょ。岐阜は田舎なんで、封建的なんですよ」

と漏らしている。

   09年1月の市長選で岐阜市民はどういう判断を下すのか。