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「伊勢丹」「三越」「高島屋」営業時間短縮 不況深刻「百貨店」がコスト削減開始

   大手百貨店が営業時間を短縮し、定休日を増やす。伊勢丹は2009年4月から4店舗で閉店時間を30分早める。三越も8店舗で営業時間の短縮や、一部店舗で定休日を増やす。売上高が軒並み前年比2ケタ減と低迷する中、「確実に効果が出る」コスト削減策だけに、今後他店にも広がりそうだ。

伊勢丹4店舗、営業時間を30分短縮

   伊勢丹は4月1日から、東京・吉祥寺店、府中店など4店舗で閉店時間を30分早め、朝10時~夜7時に変更する。従来のシフト勤務(2交替制)をやめ、全従業員が同時間に勤務する。休憩時間や休日を増やすことで、従業員の年間総労働時間に変更はない。9月まで実施し、10月以降は改めて設定する。

   三越も4月から東京・日本橋本店の閉店時間を1時間繰り上げて、朝10時~夜7時にする。札幌店、千葉店など郊外7店でも営業時間を短縮するほか、一部店舗では休業日を増やす。

   三越伊勢丹ホールディングスの広報担当者によると、主に光熱費の削減を見込み、その結果次第で店舗の拡大もあり得る。

   3月から2店舗で営業時間を短縮している高島屋。同月1日から埼玉・大宮店で1時間、4日から東京・立川店で30分、短くした。従業員のシフト勤務をやめ、営業効率の見直しを図る。

   広報担当者は、

「大型店で短縮すれば、光熱費分が浮いたとしても、収益はマイナスになるでしょうし、他店で実施することは今のところ考えていません」

と話している。

   また、大丸、松坂屋を展開するJ.フロント リテイリングの広報担当者は、

「実施する予定はありませんが、随時検討しています。過去にお客様のニーズや業務効率の観点から行ったことがあります」

という。

今後抜本的な第2、第3のコスト削減策が出てくる

   各社とも、「騒ぎ立てるほどのものではない」としている。

   ただ、野村総合研究所、サービス事業コンサルティング部長の西川義昭さんは、こう指摘する。

「確かに、この程度の削減では収益そのものを引き上げるほどの大きなインパクトにはならないが、消費マインドが冷え込み、売上げが落ちているなか、百貨店が本格的に収益向上を考え始めた、という点では注目に値します」

   首都圏の主要百貨店では軒並み2ケタの減少が続き、「百貨店不況」は深刻だ。

   2月の売上高(速報値)によると、かつて「王者」と呼ばれた伊勢丹新宿店でさえ前年比14%減。三越日本橋店は11.5%減、銀座店は19.8%減。高島屋東京店は12.2%減、新宿店は13.1%減。大丸心斎橋店は25.3%減、東京店は16.8%減、松坂屋名古屋店は14.2%減、銀座店は15.1%減。

   08年後半から続く景気後退により、消費者の生活防衛意識が高まり、宝飾品、ブランド品などの高額商材や、衣料品が伸び悩んでいる。

「本格的にコストを削減するには、内部組織の再編、取引先など他社を巻き込んでの構造改革が必要となり、時間がかかる上にハードルも高い。それに比べて効果は小さいが、確実に結果が出る方(営業時間の見直し)から始めたということです。今後、もっと抜本的な第2、第3の削減策が出てくるでしょう」