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宮城県「倒産寸前」試算 ネットで巻き起こる「前知事」批判

   宮城県が明らかにしたショッキングな財政見通しが話題になっている。2011年度には財政再生団体に「転落」しかねないという内容だ。企業でいえば倒産寸前というのに等しい。この結果にネット上では「前知事」の浅野史郎氏批判が盛り上がっている。

「当然そうならないための努力をしていく」

   宮城県は2009年3月13日の県議会総務企画委員会で、「2011年度にも自治体財政健全化法に基づく財政再生団体に転落する可能性がある」とする中期(09~13年度)財政見通しを明らかにした。これは、宮城県内の名目経済成長率が財務省の予測(1.1%~2.3%)を毎年度2%下回ると想定して、地方税、地方交付税など一般財源総額が(1)09年度と同額、(2)毎年0.8%減少の2通りで試算を行ったもの。どちらの試算でも、11年度には自治体財政健全化法が定める財政再生団体へ転落してしまう。

   全国的に見ても地方の財政は厳しいものとなっている。07年に北海道夕張市が財政再建団体(現在は財政再生団体)に指定されたのは記憶に新しい。他でも、07年度決算では大阪府泉佐野市や和歌山県和歌山市など40市町村が、財政再生団体の一歩手前である早期健全化団体に相当する状態だという。都道府県レベルでは、岡山県の石井正弘知事が08年5月29日、定例会見で09年度から18年度までの財政試算を示し、11年度にも財政再生団体へ転落する可能性を示唆していた。

   宮城県財政課はJ-CASTニュースの取材に対して、各報道は「断定的で、不安をあおってしまう書き方だった」と前置きしながら、

「試算、数字上はそうかもしれないが、指をくわえて待っているだけでは、という危機感がある。当然そうならないための努力をしていく」

といい、あくまで想定であることを強調する。県民からは、「公務員の給与が高いんじゃないか」、「民間のほうが厳しくやっている」、「県債が紙くずになってしまうのでは」など多くの声が寄せられている。

   これに対しては、

「県民生活に直結するような経費はできるだけ死守したい。ただ一方で、地方交付税を(三位一体改革以前の)元に戻す、地方消費税の拡充など、構造的な問題についてもより強く訴えていく。また国にばかり頼れない部分で、もっと深く突っ込んで何かできないかを探していく」

と話している。

   そんな中、ネット上では1993年から2005年まで宮城県知事を3期務めた、浅野史郎氏(現慶応大教授)への批判的なカキコミが目立つ。巨大掲示板「2ちゃんねる」では、

「何故か超僻地につくったスタジアムとか負の遺産が大きすぎる」
 「前知事は改革派知事といわれていたのに、居なくなってみたら改革は名ばかりで実態は負の遺産だらけ…」
 「結局やり手ではなかったということか?」

と、浅野前知事を批判する声も多い。

不況は想定以上の大激震だった

   SNSサイトのミクシィ(mixi)でも、

「(前知事が)借金増やしまくって2倍にしてるからなぁ…」

といった県の負債の増加に言及する声が目立つ。

   浅野氏は07年3月2日、都知事選への出馬の際、「宮城県知事時代に負債を増やしたと言われているが」との質問に対し、

「反論はない。国の施策に協力することで県債残高が積み上がったということだが、泥仕合になるから言わない」

と説明している。

   そこでJ-CASTニュースは浅野前知事に言い分を取材してみた。

「(任期中に)負債が2倍になった、といわれているが、同じ期間の他県の負債と比べると宮城県はむしろ少ないほうだった。切るべきところは切っていたし、放漫財政という見方は客観的には全く合っていない。都知事選でのマイナスキャンペーンに使われた部分がある」

と反論する。

   また現在の財政難については、不況による影響が想定していた以上の大激震だったことを強調し、

「もはや自助努力では無理な状況だ。構造的な問題で、宮城県特有のことではない。全国が一体となってスクラムを組み、国にシステム改革を訴えていくしかない。今回宮城県は、たまたま早くまじめにシミュレーションした結果を公表しただけ。『どうなるのか』が分かって初めて対策が取れるのだから、(公表は)正しい行動と言えると思う」

と説明した。今後に関しては、あくまで外からみた意見だが、としたうえで、こう述べる。

「すでに肉から骨まで切っている。ギリギリになったら給与カットをするしかないでしょう。財政再生団体になったらそれ以上の給与カットが来ますから。もう地方にはここしか切れるところがないんです」