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廃墟の魅力長崎「軍艦島」 上陸解禁、ツアーも組まれる

   長崎県沖に浮かぶ島、通称「軍艦島」。廃墟ファンの間では以前から知られていた「石炭の島」が2009年春、島内の整備が進んだこともあり、上陸が可能になった。旅行会社ではすでに上陸ツアーが組まれるなど、注目を集めている。

世界遺産国内候補にリストアップ

長崎県沖に浮かぶ「軍艦島」(写真提供:「軍艦島を世界遺産にする会」)
長崎県沖に浮かぶ「軍艦島」(写真提供:「軍艦島を世界遺産にする会」)

   軍艦島(長崎県長崎市、端島)は南北480m、東西160mほどの小さな島だ。島の外観が軍艦に似ていることから、こう呼ばれている。軍艦島は明治時代初期から、石炭の採掘で栄えた近代的な都市と知られ、1960年頃の最盛期には5000人以上が住んでいた。人口密度は当時、東京23区の9倍以上に達したとも言われている。近代的な高層の鉄筋アパートが建てられ、学校や体育館、映画館などがあった。

   しかし、炭坑が閉山された1974年以降、無人島となった。当時の建築物や街の様子はそのまま残された廃墟となっていたが、その様子は写真集に収められており、廃墟ファンの間ではよく知られた場所だった。また、軍艦島の周囲をクルージングするツアーは10年ほど前から続いている。2008年9月には、「九州・山口の近代化産業遺産群」の中の一つとして、世界遺産国内候補にもリストアップされており、話題の場所でもある。

   そんな中、軍艦島がある長崎県長崎市は2009年4月下旬からの一般客の上陸を許可している。市では2008年度予算として、軍艦島の整備に1億500万円を計上、見学用の通路を整備した。2009年3月、島の南側には、幅2メートル、長さ230メートルにわたる通路が完成したばかりだ。

   軍艦島上陸解禁に合わせては、近畿日本ツーリストが2009年3月27日、上陸ツアーの販売を開始した。およそ1時間かけて、上記の通路を散策することができる。もちろん、廃墟となっている建造物の中には入ることはできないが、建物の外観や風景は十分に楽しめそうだ。

軍艦島は未来に向けて警鐘を鳴らしている

   ツアーを企画した近畿日本ツーリストの担当者によると、「30~50代の方が応募しています。もともと廃墟ファンや建造物が注目を集めていましたから、予約もじわじわ伸びています」と話す。

   1ツアーあたりの定員は40人。4月下旬から始まるツアーでは5コースを用意した。同社を通じて、最大500~700人が軍艦島へと行くことが出来るそうだ。なお、長崎市の条例により、悪天候の場合は上陸できないこともある。しかも、安全基準を満たす日は100日以下とも言われている。価格は2万6800円~7万8000円。ツアーでは軍艦島だけでなく、長崎県の観光名所も回る。

   ちなみに、個人のブログでも今回の「軍艦島」の上陸解禁に対して、「いつか行ってみたいのです」「ちょっと行きたい。いや、かなり。凄く」「その光景を眼にした際に、どんな感情が去来するのであろうか...。とても惹かれる」「観光地化による整備で景観が崩れないといいんだけど……」などと書き込まれている。

   NPO法人「軍艦島を世界遺産にする会」の理事長・坂本道徳さんは、軍艦島の魅力について、次のように話す。

「軍艦島は、どうやって近代化していったのかという歴史が詰まった場所です。そういう意味では、未来を考えるのには役立ちそうな場所です。今は大量消費の時代ですから、すべてを消費し尽くした果てに将来はこうなる……軍艦島はそんな警鐘を鳴らしているようにも感じます。もっとも、海の真ん中に、よくもこんなものを作り上げたなと、初めて来た人は島の迫力を感じることでしょう。それは、見ればわかるかと思います」