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ミツバチはどこへ消えた? 受粉進まず農家に大打撃

   ミツバチが日本から姿を消している。農薬による死滅や寄生虫の大発生などの要因が重なったからだという。そのせいで、交配用のミツバチが不足し、ミツバチを必要とするイチゴやメロン、スイカを栽培する農家は頭をかかえている。

2008年夏頃から、ミツバチが大量に死滅

ミツバチの数が減っている
ミツバチの数が減っている

   交配用のミツバチの販売を手がける、丸東東海商事(愛知県豊橋市)の代表、金子幸義さんは「ミツバチの出荷量が業界内では前年比で50%減った」と話す。2008年夏頃から突如として、ミツバチが減ったからだ。

   原因は3つある。1つめは、主に水田で使われる害虫駆除を目的とした農薬「ネオニコチノイド」による死滅だ。主に北海道・東北地方でこうした事態が起きた。2つめは、ミツバチに寄生する「ヘギイタダニ」が大発生したこと。駆除する薬が効きにくくなっていたこともあり、ミツバチが死に絶えてしまった。3つめは、女王蜂の輸入ができないこと。女王蜂は海外で伝染病が確認され、2008年11月から輸入できない状況が続いている。これにより、ハチの数が減ってしまったというわけだ。

   ちなみに、ミツバチが大量に姿を消してしまう「蜂群崩壊症候群(CCD)」と呼ばれる謎の現象もある。アメリカでは一昨年から去年にかけて、全米のミツバチ3分の1以上が消えたといわれ、関係者を悩ませている。しかも、原因は全くわからず、今後、日本でも同様の事態が起きる可能性も心配されている。

「不受精でイチゴが実らない、小さい」

   ミツバチ減少により、ミツバチ不足の状況が続いている。ミツバチを使って受粉させるイチゴやメロン、スイカなどを栽培する農家では、ミツバチの仕入れが前年より少ないようだ。

   ミツバチ不足のせいで、販売価格も高騰している。丸東東海商事では、およそ10アールの広さで使えるミツバチ6000匹の価格は現在、2万6000円。前年同期比1万円程度の値上げだという。

   もっとも、前出の金子さんによると、3、4月はミツバチの繁殖期であることから、ミツバチが増えている状況にはある。あたたかい地域を中心に繁殖を急いでおり、「4月は前年比で80%近くまでは戻るのでは」と見込んでいる。だが、ミツバチが不足していることに変わりはなく、高価格の状況はしばらく続きそうだ、という。

   とはいえ、ミツバチ不足で最も打撃を受けるのは農家だ。栃木県にある養蜂園の担当者は、イチゴ農家から寄せられた話を交えて、こう話す。

「農家の方からは今年、不受精でイチゴが実らなかったり、小さかったり、形が悪かったりすると聞いています。これは、昨年まではほとんど無かったので、やはりミツバチが少なかったことが影響しているようです。イチゴの出荷時期は5月。農家の間では売り上げが2割近く落ちるのでは、と嘆いています」