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「賞味期限間近」菓子を格安販売 森永製菓などメーカーに広がる

   食べられるのに捨てられている食品は年間800万トンにものぼる。しかもメーカーにとっても廃棄に多額のコストがかかる。こうした頭の痛い問題をなんとか解決しようと食品メーカーが動き出した。森永製菓は賞味期限が近い自社在庫の菓子を安く売るなど、こうした動きが業界に広がっている。

森永製菓が大手メーカーでは「初の試み」

   森永製菓は、賞味期限が近い自社在庫の菓子を全国のスーパーマーケットで安く販売する。大手製菓メーカーでは「初の試み」(同社)で注目が集まっている。

   約1600円相当のビスケットやキャンディ、チョコレートなどを詰め合わせにし、1050円で販売する。商品名は「森のふくろう」だ。

   賞味期限は最低でも3か月残し、品質上、安全が確認されているものを販売する。2008年12月から地方でテスト販売したところ、好評だった。不況下で安く買いたいという消費者の心理にマッチしたようだ。

「お客さまはお得に購入できて、廃棄が減れば環境への負荷も軽減されます」(広報担当者)

   紅茶や緑茶など茶葉専門のルピシア(東京都渋谷区)。賞味期限が近い、見栄えが悪いなどの理由で廃棄される茶葉を通常売価の20%~80%オフで販売する「ルピシア・ボンマルシェ」を東京・代官山に続いて、09年3月18日に神戸にオープンした。

   賞味期限の3分の2を「販売期限」と定め、期限を過ぎたものは店頭から下げている。

「紅茶の賞味期限は2年、緑茶、ウーロン茶は1年と食品にしては長めですが、店頭で常時200種を扱っているため、どうしても期限切れが出ます。廃棄される茶葉は年間1500キロにもなっていました」

と広報担当者は明かす。

   東京・代官山の1号店がオープンしたのは08年4月。1年が経ち、廃棄量は半分に減ったそうだ。

   趣旨に賛同した食品メーカーの商品も扱っている。スペイン産オーガニックワインは通常売価3360円を2688円で、伊シチリア産のトマトソースは998円を798円で販売。メーカー数も増え、09年4月現在で75社となっている。

賞味期限が当日の菓子は詰め放題

   「アウトレット」商品として安く売っているところもある。

   山梨県の銘菓「桔梗信玄餅」(桔梗屋)では、賞味期限が12日間と短いのに加えて、期限3日前に店頭から引き上げてしまう。このため、廃棄量が年間数10トンにも上り、コストは2000万円もかかっていた。

   そこで期限間近だったり、多少変形しているものを山梨県笛吹市の本社で売り出したところ好評で、

「ここだけで年間2億円を売り上げています」(企画室担当者)

   通常は8個入りのタイプが1050円だが、賞味期限3日前のものは5個350円。さらに賞味期限が当日のものは、15cm×25cmの袋に詰め放題210円で販売している。15個前後入るので、1個あたり14円になる。観光バスも止まる人気ぶりで、1日100~200人が利用している。

   農林水産省によると、捨てられる食品は年間800万トン。その多くが賞味期限内の食べられるもので、「食品ロス」と呼ばれる問題になっている。同省をはじめ、食品業界でロスの削減に向けて検討会を開いている。その一方で、積極的に取り組んでいるメーカーはまだ少ない。