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不況で生まれた「ダブルワーク」 「体がもたねえ」悲惨な現状

   賃金カットや残業廃止などに見舞われた会社員が、生活費を補填するため2か所で働く「ダブルワーク」が増えている。本業とアルバイトを掛け持ちする働き方が現代的だ、といった報道もあるが、ネットでは睡眠時間を削って「ダブルワーク」に関わる人達の悲惨な実態が報告されている。

土曜は20時から朝4時までコンビニバイト

   はてなが運営する「はてな匿名ダイアリー」(2009年5月10日)には、「ダブルワーク」について綴ったブログが掲載されている。このブログは、大手企業の営業職、30代男性サラリーマンが筆者。これまで「絶望した」「身体は資本だからご自愛ください」など500ものコメントが書き込まれている。

   この男性サラリーマンの会社は残業が禁止になったため18時に仕事は終わる。火、水、金は21時から25時まで、土曜は20時から朝4時までコンビニでアルバイト。これで月約9万円の収入。

   働く理由は単純だ。この不況で税込み年収が630万円から480万円にダウン。このままでは私立高校に通う娘の学費と、小学生の息子が通う塾の費用が払えないうえ、こんな不況になるとは思わず、1年前に買った家のローンも重くのしかかる。

「家を売ってもローンの全部が消えるわけでもないし、それでも売らなきゃダメかもしれないな。このままじゃ無理だよ。体がもたねえ」

と悲鳴混じりに綴られている。

   SNS「mixi(ミクシィ)」には「ダブルワークしてます♪」というトピがあり、現在843人が参加している。「ダブルワーク」を始めたきっかけは、「給料安くギリギリです」など、生活の苦しさを挙げている人が多い。「ダブルワーク」で様々な経験をし、自分の世界観が広がったと評価する人もいるのだが、本業以上に副業はキツイようだ。

「夜だけ数時間働く、といったたぐいの求人は少ない」

「本業20万+バイト2万。忙しい割に全く生活は楽にならず」
「悩みはやっぱり睡眠でしょうね。一週間の睡眠時間は20時間程度」
「始めて半年、体にキテます。早く抜け出したい、こんなワーキングプア生活」

といったコメントが目立つ。

   そうはいっても、「ダブルワーク」の希望者はここ1年でかなり増えている。都内に本社がある登録制アルバイト派遣会社や、人材派遣大手に問い合わせてみたところ、

「ダブルワークという言葉を使う人が増えましたし、サラリーマンであることを隠し、アルバイトを探している人も多く見受けられます」

ということだった。しかし、応募する人の多さに反比例し、「ダブルワーク」に見合うような求人が激減しているというのだ。求人の多くは一般社員のように8時間労働。

「夜だけ数時間働くといった求人は少なく、特に土日限定といったものに関しては殆どありません。」

   派遣会社以外ではどうなのかと、「ダブルワーク」ができるという個人サイトを検索すると、なにやら怪しげな仕事が多数現れる。

富士通や日産は副業を認めたが「利用者なし」

   富士通や日産といった大手企業も、これまで禁止していた副業を正社員に認めた。国内工場で労働時間を減らして雇用を維持する「ワークシェアリング」を導入したため、賃金の減少分を補填させるのが目的だった。富士通は09年1月から09年4月末まで5000人に認め、日産は事務職など間接部門を含む全社員約3万人を対象に09年3月から実施した。しかし、「副業をした社員は殆どいなかった」(富士通広報)、「現時点(09年5月12日)では副業の申請は出ていません」ということだった。