J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

高校生「バイト」が増える 不況で学費払えず自ら働く

   学費を稼ぐためにアルバイトする高校生が増えている。未曾有の不況で父親が失業したり、母子家庭で母親がパートを解雇されたりして生活に困る家庭が増えたからだ。一方で、奨学金の希望者が急激に増えて全員には回らない。学び続けるには学生自ら、働くしかないのだ。

土日に朝から晩まで働く

   J-CASTニュースは高校生のアルバイト状況について、いくつかの公立高校に取材してみた。バイトは原則禁止だが特別な事情がある場合に認めているという学校がほとんどだが、経済的な理由からバイトの申請をする学生が2008年秋以降に増えている、という高校が多かった。

「家庭の経済状況が厳しくなり、生活費や学費の一部を稼ぐためにアルバイトする生徒が出てきています」

というのは愛知県の全日制商業高校の教師。

   全校生徒約830人のうち、2、3年生の30人がバイトの申請をしている。もっとも、隠れてバイトしている生徒もいるため、学校が把握している以上に多いと推測できる。

   静岡県の全日制高校は全校約720人中12人について、家庭の事情でバイトを認めている。副校長は、

「親が派遣切りに遭い、経済的理由から新たにバイトしたいという生徒もいます」

と明かす。

   バイトは土日が多く、中には朝から晩まで働く学生もいるようだ。

   生徒の4分の3以上が働きながら学んでいるというのは、愛知県の定時制高校。

「働きながら通う学生は全日制に比べて以前から圧倒的に多いです。ただ最近、親の収入が減ったのでアルバイトを増やすという話も聞きます」

   埼玉県の公立高校の元教師で日本高等学校教職員組合(日高教)の担当者はこう指摘する。

「私の勤めていた高校で授業料の減免を申し出た生徒が2002年は全体の9%でしたが、05年は2倍の18%になり、年々悪化しているのがうかがえます。学費や生活費のためにバイトをしている学生もかなりいて、毎月数万円を母親に渡しているとか、進学にかかる費用を自分で貯めているという生徒もいました。08年秋以降、不況が拍車をかけて、苦学生はさらに増えています」

公立高校の年間学費は40万円を超える

   日高教が実施した「2008年度修学調査」によると、私立より授業料が安い公立高校とはいえ、授業料などを含めた学校納付金と制服や教科書などの各自購入金を合計した初年度保護者負担金の最高額は40 万円を超える。さらに通学費の負担も家計に重くのしかかっている。

   授業料が払えないという理由で中退する生徒もいる。北海道の教諭は、「経済的な家庭の事情で2 人が定時制に転学、1人が中退した」と報告している。

   調査は08年10月に実施、26道府県4政令市235校(全日制194校、定時制41校)が回答した。

   そして、頼みの奨学金も厳しい。あしなが育英会は、

「急激な応募者増加で希望者全員には貸し出しができない状況だ」

と説明する。

   母子家庭が増えている上に、母親の年間所得が年々減っていることが応募者増加の一因だ。

   同会は保護者が自殺、病気や災害で亡くなったり、家庭の生活事情が苦しくて教育費に困っていたりする学生を対象に、学費と入学金にかかる費用の一部を無利子で貸し付けている。

   また、アルバイトして何とか卒業できても、年間数百万円かかる大学や専門学校の学費までは払えない。

   同育英会が08年12月22日~09年2月28日に母子家庭の高校3年生971人に行ったアンケート(回収率59.9%)で、就職希望者162人に理由を聞くと、「経済的に進学できない」(21.0%)、「家計を助けるため」(19.1%)と答えた。5人に2人が「生活苦」で進学をあきらめ、就職する実態が浮き彫りになった。