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かんぽ生命不払い調査遅れ 原因は郵政民営化に追われたから?

   日本郵政グループのかんぽ生命保険が、郵政公社時代の保険金不払い問題で調査に追われている。想定される不払いは最大80万件、調査費用は300億円に上り、配当が減額される影響も出ている。しかも本格的な調査開始は民間生保に2年遅れた。問題の背景にあるのは何か。

コールセンターに、加入者からの電話問い合わせが相次ぐ

   簡保の不払い問題が明るみになって以降、かんぽ生命のコールセンターには、加入者からの電話問い合わせが相次いでいる。しかし担当者は「まだ調査は終わっていない。2009年7月以降に不払い対象者には連絡するので待ってほしい」と繰り返すばかりだ。

   同社関係者は「調査対象が膨大な上に、目視で点検をしているので大変手間がかかり、個別の問い合わせに答えられる段階ではない」と言う。

   簡保は、小口で加入時の医師の診断が不要、職業も問わないだけに1916年の販売開始以来、庶民の保険として人気を集めてきた。そのため、郵政民営化で独立行政法人「郵便貯金・簡易生命保険管理機構」に引き継がれた簡保の契約と、かんぽ生命が新たに獲得した契約を合わせた総契約数は、依然として生保業界トップの約5300万件に達する。今回の調査対象の公社時代の支払いが1250万件に上るのもそのためだ。

   しかし、契約や支払いの件数が多いだけでは、80万件とも想定される不払いの多さは説明しきれない。簡保には、民間生保で不払いが多発したような複雑な特約はない。

調査を本格化させたのは2008年秋

   なぜ多いのか。かんぽ生命によると、保険金請求時に診断書の入院日数を実際より短く誤読するなど郵便局窓口での査定の単純ミスが目立つという。また、小口のため同一契約者が複数の簡保に加入しているケースが多いにも関わらず、契約データの名寄せが行われていないため、請求されなかった契約が不払いのまま放置されている。

   それでも不払いの多さや原因については、反省の弁が聞かれるからまだいいが、民間生保に比べて実体解明が遅れたという認識はないようだ。ある幹部は「07年5月に当時郵政公社総裁だった西川善文・日本郵政社長が『調査する』と公言し、その通りに進めていて落ち度はない」と言う。

   民間生保は05年7月に金融庁から不払いの一斉報告命令を受けた。郵政公社(当時)の監督官庁は総務省で、一斉報告をまぬがれた。かんぽ生命が調査を本格化させたのは2008年秋のことだ。「郵政民営化(同年10月)の手続きに追われ、調査どころではなかった」。関係者は口をそろえるが、契約者に理解されるだろうか。