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ローソンのam/pm買収 「破談」の真相

   ローソンによるエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pmジャパン)の買収が破談になった。am/pmの商標権を保有する米エーエム・ピーエム・インターナショナルが、国内約1100店舗のうち700店以上の店舗と、am/pmブランドの両方の維持を求めたため、加盟店の意思で店名を変更することを考えていたローソンと歩み寄りの余地がなくなってしまった。

社長退任をam/pmジャパンは公表していなかった

   「あまりに無理な条件だった」。ローソンの新浪剛史社長は、交渉が白紙に戻ったことに対し「チャンスがあれば今後も積極的に再編を模索したい」と語ったが、am/pmについての再交渉は「ないと思う」と断言した。2009年2月の買収基本合意から3カ月。当初は3月末にも最終合意する予定だったが、首都圏強化の切り札にしようとの目算は大幅に狂った。

   誤算はいくつもある。関係者は「am/pmジャパン生え抜きの相沢利彦前社長と、親会社であるレックス・ホールディングスの小松崎行彦社長の対立があった」と語る。

   am/pmジャパンはローソンとレックスが交渉中止を発表した19日夜、突然ホームページ上で本多利範副社長が18日付けで代表権のない社長に昇格、代表取締役にはレックスの小松崎社長が就任したことを公表した。

   相沢氏は3月25日の株主総会で社長を退任していたが、am/pmジャパンは公表していなかった。3月末にローソンによる買収が最終合意し、社長を受け入れる予定だったからだ。しかし、商標をめぐる対立が解けないまま交渉は長引き、2カ月近くも社長不在に。フランチャイズ・チェーン加盟店の店主すらそのことを知らなかった。

   あるFC店の店主が憤まんやる方ない表情で語った。「04年にレックスが親会社になって以降、店内の一斉改装や顧客情報のIT化など長期的な競争力向上のための設備投資が進まず、セブン-イレブンやローソンなどとの差はますます拡大した。いずれ転売することを考えていた親会社の方針だったというウワサも聞いている。今回の社長交代を伏せていたことも加盟店軽視の象徴ではないか」。生え抜きの相沢氏は、「レックスが投資を認めない」との不満を周囲にたびたび口にしていたという。

外資系大手流通グループなどが関心という話も

   ローソンとの交渉は当初、相沢氏と新浪社長との間で進み、2月の基本合意発表では2人が並んで出席。米社との契約問題について、相沢氏は「特別に大きな問題にはならないと考えている」と楽観的な見通しを示していた。

   一方のレックスは、傘下にある高級スーパー、成城石井や焼肉チェーン「牛角」が顧客の外食離れなどもあってから苦戦しており、主力銀行から債務超過とされるam/pmジャパンの売却をせかされていた事情がある。このため、商標維持に対する米社の強硬姿勢を見誤り、相沢氏との意思疎通もかみ合っていなかったのではないか、と関係者は見る。

   レックスは、ローソンへのam/pmジャパン売却が頓挫したことで、新たな売却先を探すことになるが、商標をめぐる米社との条件が緩和されない限り、同業であるコンビニエンスストアが名乗りを上げる可能性は低いとみられる。

   すでに、「日本の小売業界で巻き返しを狙う外資系大手流通グループなどがam/pmジャパンに関心を見せている」(大手商社幹部)というが、先行きは不透明だ。