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新聞業界最大のタブー? 週刊新潮が「押し紙」特集記事

   実際には配られない新聞が大量に販売店に押しつけられているとされる、いわゆる「押し紙問題」をめぐり、新たな波紋が広がっている。週刊新潮が、この問題を4ページにわたって特集したところ、新聞3社が、広告の表現などについて抗議文を送付したのだ。一方、記事を執筆したジャーナリストは、「問題が表沙汰になったことに意味がある。新聞社は紙面で反論なり裁判を起こすなりすればいい」と一歩も引かない構えだ。

新聞側は記事の訂正・謝罪などを要求

新聞各社が抗議した「週刊新潮」の広告(左)と、同誌6月11日号の記事(右)
新聞各社が抗議した「週刊新潮」の広告(左)と、同誌6月11日号の記事(右)

   波紋を広げているのは、「週刊新潮」6月11日号(首都圏では2009年6月5日発売)に掲載された「『新聞業界』最大のタブー『押し紙』を斬る/ひた隠しにされた部数水増し」と題した記事。この問題を長く取材しているフリージャーナリストの黒薮哲哉さんが執筆している。記事では、滋賀県の読売新聞販売店の店主をしていた男性が、新聞紙の配達状況についての実態調査を行ったことを紹介。その結果から、新聞社から販売店に届けられるものの、実際に読者には配達されない「押し紙」の割合を推定した。記事では、

「『押し紙率』を見てみると、大手4紙については読売18%、朝日34%、毎日57%、産経57%だった。4紙の平均でも、公称部数の実に4割以上が『押し紙』だった」

と結論づけている。

   また、6月5日の朝刊各紙に掲載された同誌の広告には、

「読売18%、朝日34%、毎日57%が配られずに棄てられていた―」

という見出しが躍った。

   これを受けて、広告で名指しされた形の新聞3社は抗議文を週刊新潮編集部宛に送付。各社は

「(調査結果は)実態と異なり、まったく信用できない」(朝日)
「広告は、読売新聞の発行部数の18%が配達されずに棄てられていたとの印象を一般の読者に与えるが、事実と異なっており、看過できない」(読売)
「客観性に欠ける調査を根拠にしており、信ぴょう性がなく、毎日新聞の名誉を著しく棄損する」(毎日)

などと主張。特に毎日新聞については、損害賠償請求を含む法的措置を検討することも明らかになっている。

   だが、週刊新潮側も、一歩も引かない構えだ。週刊新潮編集部では、

「『記事の訂正・謝罪』に応じるつもりはありません。今回の記事は、タイトルにもあるように『短期集中連載』です。『反論』という形になるかどうかは未定ですが、抗議があったことについては、今後、連載の中で触れる予定です」

とする一方、記事を書いた黒薮さんは、

「不思議なのは、抗議の主な対象が広告表現だということです。記事の内容そのものについて、どう考えているのか知りたいところです。むしろ、これを機会に、問題が表沙汰になったことに意味があると思っています。新聞社側も異論があるのであれば、紙面で反論を展開するなり、裁判を起こすなりすればいい。公の場で決着を付けるのが良いのでは」

と話す。

朝日、毎日、読売とも「『押し紙』はありません」

   この問題で特徴的なのは、主に広告表現が問題視されたことだ。ところが、今回抗議文を送った3社の紙面には、問題の表現がそのまま掲載されている。各紙では広告の表現などについて審査を行っており、問題がある表現だと判断されれば、その部分が削除されたり、「黒塗り」にされることもある。今回のケースでも、「抗議するくらいならば、事前に『黒塗り』にする」という選択肢もあったはずだ。この点については、各社は

「『表現の自由』の観点もあって事前に広告掲載を制限することは適切な行為とは考えておらず、なるべくそうした措置はとらないようにしています」(朝日新聞社広報部)
「明らかに誤った記述だったため、社内で対応を検討しました。その結果、広告をそのまま掲載し、厳重抗議した事実をあわせて報道することにしました」(毎日新聞社社長室広報担当)
「広告については、表現や内容によって制限することもありますが、なるべく制限することなくそのまま掲載するようにしています」(読売新聞東京本社広報部)

と説明。「押し紙」については、

「『押し紙』はありません。弊社がお取引している新聞販売店は、必要な部数を注文し、弊社はそれに基づく部数を送付しています。弊社が注文部数を超えて送付したり、注文と関係のない部数を送付したりすることはありません」(朝日)
「本社は販売店からの注文部数に応じて新聞を送っており、ご質問にあるようなことは把握していません」(毎日)
「『押し紙』はありません」(読売)

と、従来どおり、その存在を否定している。