J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

百貨店で「PB戦争」勃発 3万円台のスーツ、菓子や調味料

   高級品が売れず、苦戦が続く百貨店が、メーカー品に比べて価格の安い「プライベートブランド(PB)」の扱いを増やしている。「大丸」と「松坂屋」で3万8000円と4万8000円のスーツを売り出したほか、「西武百貨店」と「そごう」でセブン&アイ・ホールディングスのスーパー向けPB食品を置いている。「値ごろ感」を出し、消費者を呼び戻す狙いだ。

「大丸」はPBのシェアが20%

   J.フロントリテイリングは、傘下の「大丸」と「松坂屋」で紳士スーツのPBの品ぞろえを強化している。これまでもPBを扱っていたが、スーツは1着7、8万円と、メーカーが出すナショナルブランド(NB)と同じくらいの値段だった。

   景気が悪化し、大手紳士服店で安いスーツが売れている。そこで同社も3万8000円と4万8000円のスーツを2009年3月に出した。

   広報担当者は、

「若いお客さんにも来ていただくために、裾値(最低価格)を下げました。生産を中国に移すことで、品質レベルは落とさずに安くすることができました」

と説明する。

   発売から1か月間での消化率(売上数量/投入数量)は、3万8000円のスーツが60%、4万8000円のスーツは40%で、「新入社員に好評だった」。

   なかでも大丸は全商品に占めるPBのシェアが20%と、他の百貨店に比べて充実している。今後も新たな自主企画商品が立ち上がりそうだ。

   洗濯機で洗える紳士スーツを3月に売り出した「高島屋」。

   繊維が細く、光沢感のある高級ウールでありながら、洗濯にも耐えられる素材をオンワード樫山と共同で開発した。

   広報担当者は、

「百貨店も特徴を出していかないと、たくさんの百貨店があるなかで、選んでもらえなくなります。機能性をアップさせながらも、こういう時代なので『値ごろ感』のあるものをそろえていきます」

とし、PBを強化する方針だ。

「西武」「そごう」、イトーヨーカ堂のPBを販売

   ミレニアムリテイリングは傘下の「西武百貨店」と「そごう」で、セブン&アイ・ホールディングスのPB食品「セブンプレミアム」を2月から売り始めた。イトーヨーカー堂やセブンイレブンで扱っているものだ。

   西武百貨店池袋本店の食品売り場には、菓子や調味料など300品目を集めた専用コーナーがある。品ぞろえを充実させて、取り扱い店舗を増やしていく。

   広報担当者は、スーパーのPBを扱うようになった理由を、こう説明する。

「消費が多極化し、百貨店でこだわりの品を買われるお客さまも、ものによっては安くていいというふうに使い分ける人が増えています。両方のニーズに応えられるようにしました」

   衣料品のPBも08年秋に立ち上げた。

   婦人服ブランド「BE-IN」は、百貨店のファッション性を保ちながら、同レベルのNBのおよそ6~7割程度という手頃な価格だ。紳士服と婦人雑貨のPBもある。

   ミレニアムリテイリング広報担当者は、

「百貨店グレードでありながら、求めやすい価格で出していきます」

と話している。

   ただ、PBのシェアが他店より多い大丸(J.フロントリテイリング)は、「20%のシェアは変えない」と話している。

「PBは在庫がかさむリスクが大きい」

という理由だ。

   百貨店の多くは、NBに関して「消化仕入れ」という取引形態をとっている。商品の所有権を卸業者やメーカーに残しておき、店で売れたら仕入が計上されるという仕組みだ。これなら売れなくても百貨店の在庫にはならないが、PBではそうはいかない。

   高島屋は、

「ノーリスクで商売をやっていくことはできませんし、他の百貨店との差別化もできません。リスクを回避した昔ながらのやり方では、百貨店の力がどんどん小さくなっていきます」

としながらも、

「業務効率化の流れで販売員を減らしています。PBを増やすことになれば、増員しなければなりません」

と話していて、PBのシェアを拡大することには慎重だ。

   売上げが前年比2ケタ減と低迷する百貨店で、PBはうまくいけば突破口になるが、リスクも大きい。各社とも、どこまでやるか、手探り状態だ。