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児童ポルノ、リンクだけで摘発 警察の好きにできる懸念も

   児童ポルノのサイトにリンクを張ったとして、神奈川県警がネット掲示板の書き込み者と開設者を摘発した。これまでもURLの書き込みだけでも摘発例があり、次第に厳しくなっているようだ。児童ポルノ以外でも摘発が広がる可能性もあり、「警察の好きに摘発できるようになるのでは」という懸念の声も出ている。

「裁判でも、有罪とされる流れ」

「クリックすれば児童ポルノにつながり、誰でも見られます。だから、公然陳列罪に当たるということです」

神奈川県警の少年捜査課では、リンクだけでの摘発について、こう説明する。

   新聞各紙によると、摘発されたのは、ネット掲示板「関西○交」。4年前に摘発があった同名の児童ポルノシリーズから、名付けたらしい。

   県警では2009年7月8日までに、海外の児童ポルノ動画サイトの11アドレスを書き込んだ沖縄県内のパチンコ店員(37)と鹿児島市内の飲食店員(37)ら男3人を児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)の疑いで逮捕。さらに、掲示板を08年8月に開設した千葉県内の私立大2年生男子(19)を同日、同法違反(公然陳列ほう助)の疑いで書類送検した。

   逮捕者のうち2人は、すでに罰金50万円が確定しているが、私立大生男子は、「犯罪になるとは思わなかった」と供述しているという。

   海外サイトへのリンクで摘発は初めてというが、国内サイトでは、07年5月8日に大阪府警による全国初の摘発例がある。

   被告代理人の奥村徹弁護士によると、大阪の例では、リンクは張っていなかったが、アドレスのURLがカタカナ交じりで書き込まれていた。その後、起訴されて一審で有罪判決となり、現在は控訴中となっている。

 

   奥村弁護士は、リンクやURL書き込みについて、「裁判でも、有罪とされる流れになってきています。神奈川県警も、大阪の例などを見て動いたのでしょう」と解説する。

URLを書き込むだけでもアウト

   URL書き込みだけでも処罰することについて、神奈川県警では、その可能性を示唆する。

「例えば、httpのhを取ればよいという考え方を許せば、法令の解釈で抜け道があるようなものです。違反とみなされれば、罪に問われることが考えられます」(少年捜査課)。

   とはいえ、この問題に詳しい奥村徹弁護士によると、アドレスのURLを書き込んだだけで処罰すべきとする学説はない。このことから、大阪の弁護例では、リンクは張っていないなどとして、控訴審で無罪を主張している。

   奥村弁護士は、「学者は、だれもそんなことを想定していなかったようです。私自身は、処罰の範囲が広がり過ぎるので、それは違うと考えています」と話す。

   また、リンクを張ることについても、学説は賛否両論に分かれているという。リンクのクリックでワンクッション置いたとしても容易にわいせつサイトに行き着くというが可罰説。これに対し、不可罰説は、URLは単なる文字列で、わいせつサイトは画面上にはないことを指摘する。

   リンクだけでの処罰について、奥村弁護士は、児童ポルノ以外でも摘発が広がりかねないと懸念を示す。「著作権の問題は、怖いと思っています。『リンクお断り』としているサイトのアドレスを引用したとしたら、著作権法違反の疑いで警察に捕まる可能性もないとは言えないからです」。ただし、現時点では、摘発例は聞いていないとしている。

   警察の摘発は、今のところ、児童ポルノ目的の書き込みやサイト開設に限られている。しかし、今後は、2ちゃんねるなどの一般の掲示板にも、摘発が広がる可能性があるという。

「リンクだけで処罰する規定の条文は、作らなかったのでないんです。だから、はっきりしないんですよ。捜査に抵抗する利益が少ないので、警察は、好きなように解釈して摘発できる可能性があります。今回の例も、単純所持を禁じる児童ポルノ禁止法改正の動きのタイミングを狙ったとしか思えませんね」