J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「安いのがええ」河村市長 なぜ格安チケット使わないのか

   「市民税10%減税」などを掲げて議論を呼んでいる名古屋市の河村たかし市長と、市役所側に新たな対立が生まれている。中部空港の売り込みや姉妹都市訪問を目的に行う米国出張をめぐって、ビジネスクラスにするかエコノミークラスにするかでもめているのだ。ただ、河村市長が主張するエコノミークラスでも、支出されるのは正規料金の46万円。割引料金を使えば10万円程度で行けるのだが、わざわざ正規運賃を使うのは何故なのだろうか。

エコノミークラスでも46万円!?

   河村市長と事務方で対立が起こっているのは、2009年8月11日から行われる米国出張をめぐってだ。出張では、中部空港に乗り入れているノースウエスト航空の親会社にあたるデルタ航空の本社(ジョージア州アトランタ)を訪れ、同空港発着の便数を減らさないように要請し、姉妹都市締結から50周年を迎えるロサンゼルス市を訪問。PRイベントに出席し、8月19日に帰国する。

   デルタ航空の本社を訪れる関係から、往路(成田-アトランタ-ロサンゼルス)はノースウエスト航空を利用するが、復路(ロサンゼルス-成田)は、日程の関係から日本航空を利用。中部-成田は日航の連絡便(国際線扱い)を利用する。これらの路線の、どのグレードの座席を使うかで、市長と事務方が対立しているのだ。

   名古屋市の条例では、局長級以上はビジネスクラス、副市長以上の特別職はファーストクラスの利用が認められている。ところが、河村市長は「安い方がいい」と、エコノミークラスの利用を主張。事務方は(1)体力面を考慮してほしい(2)同行する中部空港関係者もビジネスクラスを使用している(3)一番安いクラスで航空会社に乗り付けるのは良くない、といった理由で、ビジネスクラスの利用を求め、議論は平行線をたどった。

   ところで、市が旅行会社から取った見積もりによると、事務方が主張しているビジネスクラスの全行程の航空運賃は100万円で、河村市長が主張しているエコノミークラスでも、46万円だ。同市では、いずれについても正規運賃で見積もりを取っているため、一般に広く使われている割引料金と比べて、割高感が否めない。

「緊急に行程を変えないといけなくなる可能性があります」

   例えば、ノースウエスト航空のウェブサイトで同社の運賃を河村市長とほぼ同日程で検索してみただけでも、割引運賃の場合、エコノミークラスだと税金などを含めても10万円弱~13万円といったところ。正規運賃の4分の1程度だ。一方、ビジネスクラスの場合は、直行便か経由便かどうかによって45~80万円と大きく異なってくるが、正規運賃よりも5割から2割安いのは確かで、エコノミークラスの正規運賃をわずかに下回る可能性すらある。また、航空会社が販売しているチケットでこの水準なので、旅行会社が販売している格安チケットの価格はさらに安い可能性が高い。

   「安いのがええ」という河村市長の持論からすれば、名古屋市の「復路では日程の関係で日航を使用する」という説明を踏まえたとしても、市民からは「数時間スケジュールをずらせば全部ノースウエスト・デルタを使えるようになり、割引運賃も使えるはず」「エコノミーにしてもビジネスにしても、市長も割引運賃を使うべき」との声があがる可能性もありそうだ。この点については、事務方も気にしている様子で、市長室国際交流課では

「チケットの種類には、申し込みの時期や変更がきく時期など、さまざまなものがあることは承知しています。ただ、市長については、公務の途中で緊急に行程を変えないといけなくなる可能性がありますので…」

   と、日程変更がきく正規運賃利用への理解を求めている。

   エコノミークラスの利用にこだわる河村市長だが、出張の日程が迫っていることから、事務方はビジネスクラスでチケットを発券。事実上、ビジネスクラスの利用が確定した形だ。ところが、朝日新聞が報じたところによると、それでも河村市長は

「今後どうするかは分からない」

   と反発している様子。今後、両者の対立が深まる可能性もありそうだ。