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コンビニはもう高収益ムリ セブンの値引き容認の衝撃

   セブン-イレブン・ジャパンが、消費期限が近づいた弁当などの食品類を値引きして売る「見切り販売」を容認する姿勢に転じ、2009年8月5日、弁当類の値下げ販売を巡る排除措置命令を受け入れたことを公正取引委員会に報告した。店舗の飽和などを背景にコンビニの経営環境は悪化しており、価格競争が広がり、利益率が低下するのではという不安が広がっている。

大量の食品廃棄に対する批判も高まる

   見切り販売の容認は、2009年6月に公正取引委員会から制限をしていたとして排除命令を受けたセブンが、7月末以降、フランチャイズ(FC)契約を結んだ加盟店に示した新たな販売ガイドラインに盛り込まれた。セブンは加盟店に対して値下げの手順を定めたガイドラインの説明を始めた。

   この中で(1)見切り販売については仕入れ価格を上回る価格を設定する(2)値引き販売は消費期限の1時間前からに限定する――などの条件を示した。従来は「一物二価」は消費者に混乱を与え、出店戦略にも影響しかねないとして、値引きをしないよう「経営指導」してきた立場を転換させた。

   その一方、仕入れ価格を下回る価格で見切り販売した場合の損失はすべて加盟店が負担することも明記し、値引きが無制限に広がることにも一定の歯止めを掛けた。

   同社は、見切り販売の制限行為について公取の排除命令を受けた直後に、食品類の廃棄損失の15%を本部側で負担するとの新たな制度を導入した。これは、廃棄損失を軽減するための見切り販売が一気に広がることを防ぐためだ。しかし、公取の排除命令後、大量の食品廃棄物に対する批判が高まったことを受けて「秩序ある値下げ」を認めることに方向を変え、排除命令自体も受け入れることにした。

値引きを待って弁当を買う客が増える

   今後、同社の店舗では、消費期限の迫った弁当などの値引き販売が当たり前になり、顧客の一部には値引きを待って購入するという買い控えが広がる可能性が大きい。業界大手、ファミリーマートの関係者は「業界最大手であるセブンの決定で、今後はコンビニ業界でも値引きが当たり前になり、高収益は謳歌できなくなる」と話す。

   コンビニのビジネスモデルは、売上高から商品の仕入れ値を差し引いた「粗利」から、一定割合を「経営指導料」(ロイヤルティー)として本部に吸い上げるのが基本。弁当類が売れ残って廃棄されても、その原価は加盟店だけが負担する制度だったため、本部としては、売れ残るリスクよりも、売り切れで販売機会の喪失につながることを心配する心理が強く働いた。値引きをすれば、その分、粗利が圧縮されて本部の取り分が減るほか、近接するコンビニ同士の値引き競争が加速しかねないという懸念がある。

   もともと、加盟店独自の値下げを黙認してきたとされるローソンの新浪剛史社長も「(セブンの方針転換で)一気に見切り販売が広がることはない」としながらも、「仮にそうなれば対抗しなければいけない」と警戒する。ローソンは最近、300円前後が売れ筋とされたコンビニの弁当類に500円前後の商品を投入している。「付加価値」を強調し、価格競争と距離を置くシナリオを描くが、セブンと商圏が重なる店舗も少なくなく、今後の影響を量りかねている。