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日本郵政の社長、会長人事 民主党新政権誕生で激変?

   日本郵政グループの持ち株会社日本郵政の取締役会は2009年8月27日、新設する会長職に社外取締役の西岡喬氏の内部昇格を決めた。「なぜこの時期に」。衆院選の投開票日を3日後に控えての"駆け込み決定"に、関係者の間ではさまざまな憶測が飛ぶ。

「ばたばた人事に非常に違和感」

   発表後まもなく、民主党の岡田克也幹事長が「選挙戦の最中、政権交代があり得る中で、ばたばた人事をやることに非常に違和感を感じる」とかみついた。この反応は予想されたはずだが、日本郵政は結論を急いだ。

   なぜか。ある日本郵政幹部は「佐藤勉総務相の意向に添っただけだ」と言う。会長職設置は「かんぽの宿」売却問題でガバナンス(企業統治)の欠如が明らかになり、業務改善命令を受けた日本郵政が6月、佐藤総務相に報告した改善策の一つだ。その際「3カ月以内に社外取締役から会長職を選任する」としていた。

   前出の幹部は「その期限に大臣がこだわった」と説明する。日本郵政の取締役会は通常、月末に開かれる。日程を動かさない限り、8月27日が「3カ月以内」の最後の取締役会にあたる。佐藤総務相は当初、社外取締役からの選任に難色を示し、全くの部外者が望ましいとしていたが、自らの去就の時が迫る中、ひとまず会長ポストを埋めることを優先させたと言う。

   しかし、三菱重工前会長の三菱グループの重鎮である西岡氏に会長就任を求めたのは奥田碩・日本経団連名誉会長だった。奥田経団連会長時代に、西岡氏は副会長を務め、2人の仲は近いとされる。政権交代で退任が予想される佐藤総務相からの求めだけで、この2人が火中の栗を拾うことに、三菱グループ内にも「解せない」との思いが広がっている。

政権獲得すれば西川社長は首なのか

   もともと日本郵政側は「あくまでも社外取締役から選ぶ」との構えで、全くの社外から選ぶという佐藤総務相の希望に応じる考えはなかった。今回の駆け込み会長人事は「民間出身経営者が、政争に巻き込まれることへのけん制」とある財界幹部は説明する。

   日本郵政の西川善文社長の進退問題は政争の具と化し、閣僚交代劇にまで発展した。財界は民間出身トップが政治家に揺さぶられる姿に不満を募らせている。民主党の鳩山由紀夫代表は「政権を獲得すれば西川社長にお辞めいただく」と発言したこともあり、政権交代を目前に、そんな政治の動きをけん制しようあえて会長ポストを埋めたという見方だ。

   民主党の岡田幹事長は「政権交代後すれば、(会長人事を)検証しなければならない」と話している。ただ、民主党支持の大労組、JP労組の前委員長が郵便局会社の監査役に就くなど、西川氏はJP労組と「蜜月」の関係を築いているとも言われる。いずれにせよ、西川社長の進退問題も含め、日本郵政トップ人事は、新政権を担う民主党と日本郵政の関係にとどまらず、民主党と財界の距離感を示すバロメーターにもなりそうだ。