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ユニクロ5兆円新戦略 成否のカギは人材育成

   カジュアル衣料「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングが、2011年からの10年間で売上高を09年8月期の7.3倍の5兆円に拡大する新事業戦略を打ち上げた。「ユニクロ」の海外展開を一気に広げ日本発の「グローバル・リテーラー(小売業者)」を目指すという。構想実現には各国での成長戦略を牽引できる人材の確保がカギになる。そのために一橋大大学院と連携して社内にビジネススクールを開設し、5年で200人程度の経営者候補を育成する方針も明らかにした。

最重点地域は中国中心としたアジア市場

   消費不況下で小売りや衣料品各社が軒並み苦戦を強いられる中、同社が新事業戦略で掲げたのは、売上高目標の大幅引き上げのほか、経常利益1兆円の達成。世界のユニクロ店舗は現在の846店から4000店前後に広げる計画で、売り上げ目標の6~7割を海外が占めることになる。同社は05年に発表した事業戦略で、10年の売上高目標を1兆円、経常利益1500億円の達成を目標に掲げた。今回はそれを売上高でさらに5倍に引き上げる壮大な計画。実現すれば、世界のカジュアル衣料大手の米ギャップや「ZARA」を展開するインデックスグループ(スペイン)、H&M(スウェーデン)の売上規模である1兆3000~4000億円前後をはるかにしのぐ巨大グループとなる。

   ファーストリテイリングが最重点地域と位置づけるのはアジア市場。特に同社が「GDPで世界一になるのは時間の問題」と見る中国では、現在の43店舗を年100店ペースで増やし、20年には1000店前後とする。上海で2010年春オープンする店舗は世界最大規模のアジア旗艦店にするという。

一橋大学大学院、米ハーバードビジネススクールと提携

   欧米では積極的にM&A(企業の合併・買収)の機会をうかがっている。07年に米高級衣料専門店バーニーズ・ニューヨークの買収に名乗りを上げたが、アラブ系投資ファンドに競り負け、断念に追い込まれた。「ユニクロ」ブランドを浸透させるにはどうすべきか。世界的なファッションブランドを傘下に収め、高級からカジュアルまで展開する総合衣料ブランドのイメージを浸透させるというシナリオは変わっていない。柳井正会長兼社長は「今後は日本だけで売れる世界的なM&Aに必要な資金は調達できる」と自信を見せている。

   2010年から本格的に始める人材育成プログラムは、こうした成長戦略のカギを握っている。一橋大学大学院のほか米ハーバード大ビジネススクールとも提携。世界中の経営者や研究者、トップコンサルタントを集め、「世界の社員の誰にでも門戸を開き、経営者の入り口まで育てた後は自己責任で経営を実践・経験させる」(柳井社長)という。柳井社長はいったん社長職を譲りながら再登板した経緯がある。「今でも商品本部長として新製品やチラシを確認する」毎日だ。今後の世界展開は「ポスト柳井」が何人育つかが決定的に重要になりそうだ。