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外相会見「オープン化」開催時間変更 記者クラブ反発は「既得権益の侵害」

   岡田克也外相が「記者会見オープン化」を打ち出し、開催時間を閣議終了直後から夕方に変更したことに、記者クラブ側は反発している。新聞の夕刊やテレビの昼のニュースに間に合わなくなる、つまり既得権益を侵された、というのが一番の理由だと見られる。ただ、記者クラブ側の反発にもかかわらず、外務省が発火点となって、他の省庁でも大臣会見が開放されていく可能性が強まっている。

あらゆるメディアの質問にじっくり答えるスタイルに変更

 

   「民主党政権になれば、記者会見を開放する」。そう公言していた鳩山由紀夫首相が就任会見でフリー記者やネットメディアを閉め出し「公約違反だ」と批判されているが、元民主党代表でもある岡田外相はひとあし先に会見をオープン化した。

   岡田外相が外務省の記者クラブ「霞クラブ」に対して、定例会見の開放を告げたのは2009年9月18日の夕方。記者クラブ所属の報道機関に限らず、原則としてすべてのメディアやジャーナリストに開放すると発表した。

   これまで閣僚会見は毎週2回、午前中の閣議の直後に国会や首相官邸で行われて、「ぶら下がり取材」になる場合も多かった。しかし岡田外相は「時間をしっかり取って、質問に誠実に答えるのが本来の会見のあるべき姿だ」として、今後は時間を午前から夕方に変え、場所も外務省内の会見室に移し、あらゆるメディアの質問にじっくり答えるスタイルに変更する。

「岡田さんはもともと『記者会見は開かれたものであるべきだ』という考え方の人で、民主党の幹事長代理だった2002年から会見のオープン化を進めてきました。民主党では幹事長、代表と地位が上がっていくたびに、その会見が開放されていった。もともと党レベルで行っていたことを外務省でも実行したということです」(ビデオジャーナリストの神保哲生さん)

   岡田外相からすれば、大臣会見をオープン化するのは当然のことだったわけだが、旧来の慣行に浸りきった記者クラブの記者には唐突な変更と移ったようだ。大臣の発表後、外務省記者会は「十分な説明もないまま、会見時間が夕方に設定されたことは残念だ」として、従来と同じく閣議終了直後に取材機会を設けるよう要望した。

「ぶら下がり取材」は時間限られ、アクセスできるメディアも限定

   「午前中の閣議直後の会見」を求める記者クラブの姿勢について、長らくフリーランスの立場で取材してきたビデオジャーナリストの神保さんは「既存メディアのトンチンカンな要求だ」と批判する。

「会見時間を変更されると新聞の夕刊締切やテレビの昼のニュースに間に合わないという理由なのでしょうが、自分たちの締切に合わせて会見を設定しようというのがいかに異常なことか気づいていないのです」

   記者クラブの要望に対し、外務省報道課は

「国会などでのぶら下がり取材だと時間が限られますし、アクセスできるメディアも限定されてしまいます。したがって岡田大臣の考えるオープン化にはそぐわないのではないかと考えていますが、大臣も全く行わないとしているわけではありません。閣議で外交関係の案件があったときなどに必要に応じて行われることになると思いますが、具体的にどういうタイミングで実施するのかはまだはっきりしていません」

と話し、あくまでも夕方の定例会見が原則となるとしている。

   外務省から始まった大臣会見のオープン化。その波は他にも及んでいくのだろうか。神保さんは次のように、他の省庁の開放も不可避であると見る。

「民主党は代表が会見のオープン化を公約としてきた以上、すべての民主党の大臣は会見を記者クラブ以外にも公開する義務がある。もちろん官僚や既存メディアの抵抗はあるでしょう。しかし首相官邸以外ではもっともセキュリティの問題が大きいと思われる外務省が開放したのですから、他の役所がセキュリティを理由にオープン化を拒むことはできないはずです」