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床屋さんが消えていく 理容師志願者も「過去最低」 

   理容師国家試験の受験者が過去最低を記録した。美容室で髪を切る若者が増え、「床屋離れ」が影響した。また、理容室の9割が個人経営で、高齢化、後継者不足による閉店もあり、理容店の数は年々減っている。このため業界団体、専門学校、行政が一丸となり、担い手不足に歯止めをかけようと動き出した。

理容室は「おじさんが行く場所」「ダサイ」

   理容師の国家試験は年2回行われる。2009年夏の第20回理容師国家試験の受験申込者は前回よりも417人少ない1232人(受験者1208人)で、過去最低だった。5年前まで2000~3000人台だったが、ここ数年は減少傾向にある。

   国際理容美容専門学校(東京都荒川区)でも理容師を目指す学生が減っている。広報担当者は、

「若者にとって理容室はおじさんが行く場所、ダサイという先入観があり、実態を理解してもらえていません」

と嘆く。

   若者を中心に男性も美容室で髪を切るようになり、「床屋離れ」が進んでいる。また、アイドルグループ「SMAP」の木村拓哉さんが2000年放送のドラマで美容師役を演じて話題になり、美容師に憧れる若者が続出。これも理容師の志願者が減った原因だ。ところが前出の担当者は、

「理容から美容に志願者が流れていったのは、4年前までの話です。ブームが去り、最近は美容師の志願者も減っています。若者の理美容業界への興味が以前ほどないようです」

と指摘する。

   多店舗展開する美容室とは異なり、理容室の9割が個人経営だ。担い手不足で閉店するケースも起こっている。

   理容室の業界団体、東京都理容生活衛生同業組合の雇用創造担当者は、

「現役の理容師が高齢化し、跡継ぎがいなくて店を閉めるということもあります」

といっている。

   厚生労働省の調べによると理容所は1997年以降、年々減っていて、2005年度が13万8855軒、06年度13万7292軒、07年度13万6768軒だった。

女性の理容師は引く手あまた

   理容業界団体では中高生を対象にした職業体験を積極的に行っている。東京都では210店の理容室で職業体験の学生を受け入れている。ところが都理容生活衛生同業組合の担当者は「地道な活動で、急に志願者が増えるというものではない」という。そこで行政と協力し、新たな取り組みを行っている。

   東京都は福祉政策の一環として、2009年から理容士資格取得促進事業を行っている。一定所得以下の世帯を対象に、東京理容専修校に無料で通えるというもの。定員は通信課程(3年間)が20人、通学課程(2年間)が20人で、入学金、授業料、教材費など全額無料になる。

   都理容生活衛生同業組合の担当者は、

「今後はフリーターの若者に理容室に就職してもらい、雑務をしながら収入を得て、資格学校に通うという仕組みを作っていきたいと考えています。理容室は地域密着を強化することが生き残る道。お年寄りの家庭に出向く出張理容も構想しており、まだまだビジネスチャンスは見つけられます」

と話している。

   国際理容美容専門学校によると、就職難のなかでも理容師の受け入れは多い。最近は女性向けに顔や背中の産毛をシェービングする理容室が増えていて、女性の理容師が引く手あまただそうだ。