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返済猶予よりも「仕事をくれ」 東京・大田区町工場主の声

   中小・零細企業の資金繰り支援策として亀井静香郵政・金融担当相が打ち出している「返済猶予制度」(モラトリアム)。早期実現をめざして、臨時国会への法案提出に意欲をみせる亀井金融相だが、資金の貸し手である銀行や信用金庫などは猛反対。そればかりか、借り手である中小・零細企業も手放しで喜んでいるわけではないようだ。

返済猶予1~2年にするか、3年か

   亀井金融相が提案した返済猶予制度は現在、政府の貸し渋り・貸しはがし対策ワーキングチームを中心に具体策を詰めている。2009年10月6日に明らかになった第1次案の検討過程では、返済猶予の対象を元本だけにするのか、利子も含めるのか、また猶予期間を1~2年にするか、3年にするのか、で意見が分かれるなど、改めて制度設計のむずかしさを露呈した。

   銀行などの「返済猶予によって不良債権が膨らみ、経営が悪化する」といった批判には、亀井金融相が「経営が悪化した金融機関には公的資金を資本注入する」と発言するなど、混乱している。

   ただ、借り手の企業側も猶予期間中はもちろん、猶予期間が終わってからも新規融資を受けにくくなったり、貸出金利が引き上げられたりと、心配な点は多い。借り手側はどう考えているのか、直接聞いてみた。

返済猶予後の資金繰りが心配

   東京・大田区は、都内でも中小・零細、従業員わずか数十人ほどの小さな町工場が建ち並ぶ工場地帯。そこでステンレス加工や特殊鋼加工を営む大洋機械の猪狩浩社長は、「中小企業の厳しい状況を、前向きに理解してくれたことには評価しています。しかし、返済猶予と引き換えに新規融資を止められては困る」と漏らす。

   プラスチック切削加工のシナノ産業の柳澤久仁夫社長も、「3年間待ってもらったとして、そのときの景気が悪くて、経営状況も悪くなっていたら、次が借りられない。そのことが心配」と不安げだ。

   現状でも、銀行の融資審査は厳しい。シナノ産業は9月に融資を受けたが、申請した金額の半分しか実行してもらえなかったという。景気悪化が激しくなって、「常に次(の融資)は大丈夫だろうかと不安になる。銀行から半分を引き出すのも大変なのに、返済猶予によってさらに銀行の経営が厳しくなれば、巡り巡って自分たちの経営を圧迫する可能性がある」(柳澤社長)と心配する。

   大洋機械の猪狩社長は「3年間の返済猶予といっても、3年後に景気が回復して仕事が増える保証はない。結局いまの不況がどこまで続くのか、ということなんです」という。

   シナノ産業の柳澤社長は「モラトリアムが景気対策になるのであればいいが、よくなる感じがないですよね。もっと産業が興るような景気対策に力を入れてほしいし、そのためにはある程度の公共事業も必要でしょう」と、景気重視の政策を訴える。