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西日本初の物流拠点開設 書店業界はアマゾンに戦々恐々

   インターネット通販のアマゾンジャパンが、日本国内の物流拠点としては3カ所目、西日本としては初めての物流センターを大阪府堺市に開設した。従来のアマゾンの国内物流拠点は千葉県の市川市と八千代市の2カ所だけだったが、新たに関西国際空港に近い堺市に物流センターが生まれた効果は、近畿はじめ西日本のユーザーにとって決して小さくない。

当日中に届くサービスが近畿6府県でもスタート

   午前中にネットで注文し、在庫がある商品ならば当日中に届く「当日お急ぎ便」と呼ばれるサービスが、大阪、京都、兵庫など近畿6府県でもスタートしたからだ。これまで同サービスは東京、神奈川、埼玉など1都6県に限られていた。ネットユーザーの利便性が高まる一方で、大阪府を始めとする近畿の書店業界などは、アマゾンの西日本進出に脅威を感じているようだ。

   アマゾンは書籍を中心に、その在庫の多さと低価格、ネットで全国から24時間注文できる利便性を武器に、2000年11月の日本上陸以来、飛躍的に売り上げを伸ばしてきた。扱う商品もこの9年間で順次拡大し、現在は書籍やCD、DVD、ゲームソフトなどメディア商品のほか、家電製品、食品・飲料、衣料品、化粧品など20のストア(専用サイト)を開設。「1700万点を超える豊富な品揃え」をアピールしている。アマゾンはライバルと目される日本国内最大のネットショップ、楽天市場と異なり、自社で在庫を抱え、注文を受けた商品を倉庫から宅配するビジネスモデルを採用している。そのアマゾンの豊富な在庫を支え、消費者に迅速に商品を発送する拠点が、2009年8月、西日本にも完成したというわけだ。

   アマゾンは現在、米国、英国、ドイツ、フランス、日本、カナダ、中国の7カ国でネットショップを展開しており、この7カ国のサイトから200カ国以上のユーザーに商品を宅配している。アマゾンは1995年の米国での創業後、右肩上がりで売上高が伸び続け、08年度の世界全体の売上高は192億ドル(1兆7000億円)。世界に約9400万人以上のユーザーを抱えている。

「近畿の『町の本屋』は廃業に追い込まれる」

   今回、成田空港に近い千葉県の2カ所に加え、関空に近い堺市に物流拠点を構えたのは、近畿圏など大消費地のユーザーに迅速に商品を供給することだけが目的ではない。「アジアなど日本人が多い地域では様々な商品の需要が見込まれるため、関空からの輸出も積極的に行いたい」(アマゾンジャパン幹部)という戦略もあるという。海外の商品を国内に輸入し、ユーザーの様々な嗜好に応える幅広い商品を揃える意味ももちろん大きい。

   今回の物流拠点の稼働は、ネットユーザーにとっては朗報だが、大阪府を始めとする近畿の書店にとっては脅威のようだ。アマゾンは早稲田大学の学生やOBが「早稲田カード」を利用して書籍を購入した場合、代金を8%割り引くサービスを行っているが、中小出版業界や書店業界が「アマゾンの割引を容認していると、書籍の値引き販売がなし崩し的に広がりかねない」「本をインターネットで買えば10%引きなどという事態になれば、誰も書店で本を買う人はいなくなる」などと、懸念を表明している。

   今回、アマゾンの物流センターが堺市で稼働したことについても、「アマゾンが近畿でも即日配送などの攻勢をかければ、大阪はじめ、近畿の『町の本屋』は廃業に追い込まれる」との警戒感が書店関係者の間では根強い。今後、書店業界などが何かしらのアクションを起こすことも予想され、事態の推移が注目される。