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ハウステンボス再建難航 存続自体が危ぶまれる

   長崎県佐世保市の大型リゾート施設「ハウステンボス(HTB)」の再建が揺れている。2008年秋以降の景気悪化で入場者数が減少し、経営が悪化。親会社の野村プリンシパル・ファイナンス(PF)などが新たな支援企業を探しているが、交渉は難航しており、HTBの存続自体が危ぶまれる状況になりつつある。

   野村PFは2009年夏、九州電力やJR九州など地元有力企業に対し、HTBへの支援を要請。同時に、ホテル運営会社、ホテルマネージメントインターナショナル(HMI、神戸市)と、HTBの経営権譲渡も視野に入れ、出資交渉を進めてきた。HMIは日本郵政の宿泊・保養施設「かんぽの宿」の入札でオリックス不動産と争ったことで知られる企業だ。

韓国人旅行客が激減、苦戦が続く

入場者減が続くハウステンボス
入場者減が続くハウステンボス

   しかし、地元企業は9月中旬、「株主への説明がつかない」などとして、出資の検討には入らないことを申し合わせた。「唯一の支援候補」となったHMIも、HTBの土地と建物の取り扱いなどで条件が折り合わず、10月初旬、佐世保市に「交渉断念」を伝え、HTBの再建は完全に宙に浮いた。

   野村PFが地元企業やHMIに支援を求めた背景には、HTBの厳しい経営状況がある。HTBは1992年3月に開業、約150ヘクタールの広大な土地に、17世紀のオランダの町並みを再現したのが売りで、東京ディズニーランドと並ぶ施設と言われたこともある。しかし入場者数は低迷し、初期投資2250億円も負担となり、03年2月には会社更生法の適用を申請。04年に野村PFが110億円の資金を援助し、経営再建を進めてきた。

   その後も苦戦は続いたが、ここ数年は韓国人観光客の呼び込みに力を入れ、06、07年度の入場者数は前年度を上回った。だが、08年秋のリーマ ンショックを機に状況は悪化。世界的な景気低迷やウオン安・円高の影響で韓国人旅行客が激減し、08年度の入場者数は過去最低水準の187万人、売上高は 更生法適用直後の03年度を下回る154億円まで落ち込んだ。さらに更生計画に従い、15年まで年8億~13億円を弁済する義務もあり、野村PFにとってHTBは重荷になってきた。

地元企業の多くは「出資は考えられない」

   HTBは約1100人の従業員を雇用しているほか、観光地としての知名度は高く、その存続は地元経済にとって重要だ。このため、HMIが 佐世保市に「交渉断念」を伝えた直後、朝長則男市長は九電首脳らに泣きつき、支援を懇願。一度は背を向けた地元企業も仕方なく10月8日、検討チームの立ち上げを決めた。

   しかし、HTB再建の行方には暗雲がたちこめたままだ。地元企業の多くは03年のHTBの会社更生法適用時に痛手を受けており、「出資は考えられない」という。既に「採算性がなければ、閉園もやむを得ないのではないか」との声さえ出ているほどで、運営面での支援はできても、資金援助は難しいとの見方が大勢だ。佐世保市も支援を呼び込むため、土地や建物の一部公有化を検討しているが、貴重な税収を失うことには拒絶反応も大きい。入場者増など肝心な経営改善の秘策も見つからず、HTBは大きな正念場を迎えようとしている。