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「九電玄海」プルサーマル開始 安全性やコスト面など課題山積

   九州電力は2009年11月初旬、玄海原子力発電所3号機(佐賀県玄海町、118万キロワット)で、プルサーマル発電の試運転を始めた。12月2日には国内初となるプルサーマルの本格的な営業運転を開始する予定だ。政府が原子力政策の柱として掲げる「核燃料サイクル」が当初予定から10年以上遅れて、ようやく動き出した形だ。しかし、安全性やコスト面などで課題は山積している。

   玄海原発3号機は8月末から定期検査のため運転を停止。使用済み燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料の取り付け作業を10月中旬に実施した。11月5日午前に原子炉を起動し、同深夜に核分裂の連鎖反応が一定となる「臨界」に達して、発電に必要な巨大なエネルギーが発生する状態となった。

「緊急時に出力を落とす制御棒の効きが悪い」?

   四国電力の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)でも2010年2月、中部電力の浜岡原発4号機(静岡県御前崎市)でも来年度中に、それぞれプルサーマル発電を始める計画で、国内のプルサーマル計画が順次動き出す。折しも、民主党政権が「2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比25%削減する」との目標を掲げ、発電時に二酸化炭素をほとんど排出しない原子力発電への関心が高まる中、官民あげた核燃料サイクルが始動しつつある。

   しかし、プルサーマル発電を巡っては、あまりに多くの問題が残されたままだ。プルサーマルは、プルトニウムとサーマルリアクター(軽水炉)から作られた和製英語。MOX燃料を、既存の軽水炉で燃やし発電することだ。

   玄海原発のプルサーマル発電に反対する地元住民らは「安全は十分に確保されていない」と不安を叫ぶ。元々、軽水炉はウラン燃料を使うもので、MOX燃料を使用すること自体への懸念は根強い。「緊急時に出力を落とす制御棒の効きが悪い」との指摘もあり、電力会社側は「問題ない」とするが、住民らの不安はぬぐいきれない。使用済み燃料はウラン燃料に比べて熱量が大きく、取り扱いが難しいとの専門的な指摘もある。

仏に製造委託、海上輸送で取り寄せにばく大なコスト

   そもそも、核燃料サイクルの本来の目的は、使用済み燃料を再処理し、プルトニウムを高速増殖炉で再利用することだった。資源の少ない日本では資源の有効活用につながるとの大義名分もある。

   しかし、肝心の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)は1995年のナトリウム漏れ事故で、いまだに停止したままだ。使用済み燃料の再処理についても、青森県六ケ所村の再処理工場の完成は遅れ、実現のめどは立っていない。実際、九電は玄海原発で使用するMOX燃料をフランスの原子力関連企業アレバ社に製造委託し、海上輸送で取り寄せており、ばく大なコストをかけている。

   ただ、核兵器の材料にもなるプルトニウムを消費するという意味は少なくない。日本のプルトニウムの保有量は6月末で、原爆の約5000発分に 相当する28.2トンにも及ぶとされ、核保有の疑惑も招きかねないからだ。しかし、核テロの懸念も払しょくできておらず、難問は解決されないままだ。