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非正規雇用労働者の労働条件改善 ぶちあげた連合何ができるのか

   2010年の春闘(春季労使交渉)始動――。1月26日に開かれた日本経団連と連合による恒例の首脳懇談会で開始の号砲が鳴った。ここでは、09年同様、雇用確保を優先する考えでは一致し、特に新卒者の厳しい就職情勢をにらみ、若年層の雇用安定に向けた共同声明を初めて取りまとめた。

   だが、給与に関しては、勤続年数に応じて毎年給料を自動的に上げる「定期昇給(定昇)」をめぐり、「凍結・延期も議題に」と訴える経団連側に対し、連合は定昇死守の構えを示しており、厳しい交渉を予感させるスタートになった。

連合が非正規労働者含んだ交渉するのは初めて

   第1の焦点は、全体の3割を占める非正規労働者問題。古賀会長は「非正規労働者を含むすべての労働者の処遇を交渉のテーマとする」と語り、連合として初めて非正規雇用労働者を含め、全労働者の労働条件改善に取り組む考えを示した。

   実際、連合が非正規労働者を含んだ交渉をするのは初めて。しかし、非正規の分野に「特効薬」があるわけではない。経営側からは「景気回復を待つしかない」と苦悩の声が漏れる。

   賃金交渉での焦点は定昇だ。懇談会では、経団連の御手洗冨士夫会長が、先行き不透明な経済情勢を指摘し、「自社の存続・発展と従業員の雇用の安定が最重要課題」として、定昇について、個々の企業によって凍結・抑制を検討することもやむを得ないとの考えを示した。対する連合の古賀伸明会長は「定昇は労使の信頼関係の根幹だ」と強調した。

   デフレ下の賃金決定は経済に大きな影響を与える。物価が下がっている中で、名目上の賃金が下がらなければ、実質賃金は上昇することになる。景気低迷の中での「実質賃上げ」となれば、企業の経営には重荷になり、新規採用を含めて一段と雇用を増やしにくくなる。すでに職を得ている正社員はいいが、失業者にとって事態はさらに厳しく、経済全体としても消費低迷が続き、さらに経営を圧迫する……というデフレスパイラルに陥る恐れも増す。

   もちろん、経営側は可能な限り賃上げに努め、労働者の購買力を高め、それによって消費を増やし、景気回復を、と労働側は訴える。しかし、経営あっての雇用というわけで、トヨタ労組、電機連合など大手企業の労組では「ベースアップ」要求を見送る労組が続出。「定昇死守」を叫ぶが、「こんな状況ではベアどころか定昇の確保も怪しい」との自嘲気味の声も聞こえる。

日本でもワークシェア議論がクローズアップ?

   そんな中、「ユニクロ亡国論」ともいえる論陣を張って注目されるエコノミストの浜矩子氏の論はユニークだ。浜氏は、ユニクロを筆頭として、格安商品を実現し利益を上げている企業を持ち上げるマスコミを批判、過激なまでの安売り競争は、さらなる不況地獄の先触れだと警告。この観点から、オランダの政労使の合意を参考に、「三方一両損」を提唱している(1月22日付「日刊ゲンダイ」)。(1)企業は賃下げをやめ、できれば賃上げをする、(2)労働側は安物買いを我慢する(消費財メーカーの社員なら自社製品を買う)、(3)政府は企業と労働側に見舞金(減税か補助金)を出す――というものだ。

   しかし浜氏の提案が実現される可能性はゼロに近い。ただ、オランダが賃上げ抑制と雇用維持をセットにしたワークシェアリング(労働の分かち合い)で再生したのは有名で、日本でもワークシェア議論がクローズアップされそうだ。