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空前の「ニット」ブーム到来 日本メーカーの糸大もて

   いま、海外ハイブランドで「ニット」が注目されている。フランスの高級ブランド「シャネル」をはじめ、有名ブランドからデザイン性の高いニットが相次いで登場した。しかも多くが日本メーカーの糸を使っている。

   「シャネル」やイタリアの「ミッソーニ」「ドルチェ&ガッバーナ」といったハイブランドの2009/2010秋冬コレクションで、ニットがたくさん登場した。ハイファッション誌「ヴォーグ ニッポン」でも、誌面と電子版で「主役級のニット」として紹介されている。

オバマ夫人の「ニナ・リッチ」カーディガンもニット

佐藤繊維のオリジナルブランド「M.&KYOKO」09年秋冬コレクション
佐藤繊維のオリジナルブランド「M.&KYOKO」09年秋冬コレクション

   シャネルでは白を基調にして黒をアクセントにしたニットを発表した。前に大きなリボンが付いて、袖を膨らませたデザインだ。ドルチェ&ガッバーナもボリュームのある袖のジャケットのようなカーディガンを提案。ニットで有名なミッソーニはマフラーを2本使いした全身ニットのコーディネートを打ち出した。ほかにダイアン フォン ファステンバーグ、ソニア リキエル、ステラ・マッカートニーといったコレクションの「常連」でも斬新なニットが目立った。

   ファッション業界の注目を集めるミシェル・オバマ米大統領夫人は09年12月10日にノルウェーで行われたノーベル平和賞受賞式典で、フランスのハイブランド「ニナ・リッチ」のカーディガンをワンピースの上に羽織った。

   このカーディガンに使われたのが佐藤繊維(山形県寒河江市)の細い「モヘア糸」だ。同社は編むと約100色のグラデーションになる糸や、ウールの中央に和紙を入れて軽さを出した糸など50~60種の糸を作っていて、色の展開も含めると150~200種にもなる。07年にイタリアで行われた生地展示会に初めて出展し、「おもしろい糸を作っているメーカー」として海外デザイナーの注目を集めた。

   ハイブランドでは引き続きニットブームで、2010年3月にパリ、ミラノ、ニューヨークで開催される2010/2011秋冬コレクションでも同社の糸が使われている。前年のコレクションよりも引き合いが増えたそうだ。

   佐藤正樹代表取締役社長は、

「ニットは100の工場で作ったら100通りできるほど無限の楽しみがあり、ニットで作れないものはありません。セーターのような実用的なニットは売れなくなっていますが、変わった素材で作るアクセサリー感覚のニットが国内外で人気です」

と話している。

ファストファッションにも広がる

迷彩柄のニットも登場。「M.&KYOKO」09年秋冬コレクション
迷彩柄のニットも登場。「M.&KYOKO」09年秋冬コレクション

   高級ブランドに限らず、ニットは今やトレンドだ。

   スウェーデン発ファストファッション「H&M」とソニアリキエルがコラボレーションした「Sonia Rykiel pour H&M」第2弾でニットウェアのコレクションが登場し、2010年2月10日に発売を開始した。セーター、ジャケット、ワンピース、スカート、サロペット(つなぎ)、キャミソール、ショートパンツ、ドレスと40アイテム以上のニットウェアを展開する。

   一方、製造業者の団体、東京ニットファッション工業組合の担当者は、日本で流通しているニットのうち数量ベースで9割以上が中国からの輸入だと指摘する。

「日本のニットの技術は高く、海外製品にはないキメ細やかな仕上がりです。しかし国内百貨店の販売シェアが落ち込んでいるので、中国の富裕層向けや海外ブランドに販路を拡大するしかありません」

   あるニットメーカーも「安いファストファッションが優勢な日本では高価な国産糸を使った製品を売る場が減っている」ともらし、海外ブランドへの供給に活路を見いだそうとしている。