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章男社長、しどろもどろ トヨタ会見の「不具合」とは

   トヨタ自動車の一連の大量リコール問題で、豊田章男社長は2010年2月17日、3度目の記者会見に臨んだ。豊田社長をめぐっては、これまでにも「社長が会見に出てくるのが遅かった」といった批判が噴出していたが、今回もしどろもどろになる一幕があった。専門家からは、背景として「社長交代に際して広報体制を一新したことが影響したのでは」との声も出ている。

   豊田社長は一連の品質問題をめぐり、2月17日夕方、東京都文京区の同社東京本社で記者会見を開いた。この問題について社長が会見に臨むのは3回目。

社長は「初心者マーク」

リコール問題で3度目の会見に臨む豊田章男社長
リコール問題で3度目の会見に臨む豊田章男社長

   2月5日に名古屋市内で開かれた最初の会見をめぐっては、社長がこの日まで会見に出席しなかったことの理由を効果的に説明できなかったことなど、メディア対応のまずさが相次いで指摘された。例えば夕刊紙の見出しで「子ども社長」と揶揄されたほか、経済評論家の山崎元さんは、2月10日、自らのブログ上で

「明らかに『初心者マーク』付きの社長なのだから、情報発信に際しては、厳しい品質チェックが事前に必要だった筈なのだが、『練習』の必要性を指摘したり、想定問答の答えにだめ出しをしたりするような真の『忠臣』が周囲にいないようにお見受けした」

などと指摘した。

   1時間半にわたって開かれた2月17日の会見でも、やはり「初心者マークぶり」を露呈する部分があった。約7分間あった冒頭発言では、基本的には原稿に目を落としたままで発言。質疑応答で記者が「社長に答えて欲しい」と念を押した質問でも、隣席していた品質保証担当の佐々木真一副社長が答えてしまい、社長が再度回答を求められる場面もあった。

   さらに、会見に出席するタイミングが遅くなったことを再度問われると、

「今回の件に対して、私の行動が遅かったこと、これは『やってしまったこと』なので、大変申し訳なく思っている。今、こうして出てきている。決して逃げようと思って会見を遅らせた訳ではない」

などと釈明した。

広報体制一新が影響?

   会見が始まって1時間が経過した時点で、会見場からは、ひときわ厳しい質問が飛んだ。「米国議会での公聴会には出席するのか」という再三の質問に対して、明確に回答しなかったことを受けてのもので、朝日新聞シニアライターの山田厚史さんが、このように詰め寄った。

「米国に行って、何故、議会に向かい合い、プレスの前に立ち、消費者に、社長から『トヨタはこういう風にやっている』と説明しないのか。私が米国の消費者ならば『トヨタの大将が来るのであれば、我々に何か言ってくれるのではないか』と思うはず。1番偉い人が説明してくれると期待するはず」

   これに対して、豊田社長は

「いいアドバイスをいただいた。決して米国に行かないと言っている訳ではない」

と釈明。さらに山田さんが

「米国の消費者の前で説明をするという覚悟はあるのか。社長が、この問題が重大だと認識されたのはいつか」

と問いかけると、豊田社長は

「現在、危機的状況を認識してやっているので、是非とも今後を見て欲しい」

と、やはりあいまいな答えしか返せなかった。山田さんはイライラした様子で

「いつ危機的状況だと分かったんですか? それは(米国)運輸省の人が(09年末に)来た前ですか後ですか」

と問い詰めると、

「いつと言われても……、なかなかアレでございますが、現在は危機的状況だと思っています」

と、しどろもどろな様子になってしまった。

   「トヨタモデル」(講談社現代新書)などの著書がある経済ジャーナリストの阿部和義さんは、社長就任による社内体制の変化が影響しているとみており、

「09年に豊田社長が就任してから、『奥田(碩)-張(富士夫)-渡辺(捷昭)』という歴代社長の下での社内体制を一新しています。それは広報も例外ではなく、過去の危機管理などに関するノウハウが受け継がれていないのだと思います。刷新するということには裏表があるものなので、ある意味では当たり前です。安定するまでは時間が必要なのでは」

と話している。