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ベスト電器ゴタゴタの末社長交代 ビックカメラの意向が強く働いた?

   家電量販店大手のベスト電器(本社・福岡市)は2010年3月20日、1月に就任したばかりの深沢政和社長が辞任し、小野浩司取締役が新社長に就くという異例の人事を発表した。

   東証1部上場の著名企業が、わずか2カ月でトップ交代するという異常事態。その原因は経営陣の主導権争いにあるとされており、経営再建を目指す同社は危機的状況を迎えている。

トップ人事の背景に深刻な社内対立があった

   「経営陣の意見対立もあって、今期の事業計画をいまだに策定できない」。福岡市で同日会見した小野氏は、今回のトップ人事の背景に深刻な社内対立があったことを示唆した。

   ベストは1月、2012年2月期までに大規模な店舗閉鎖を実施し、1000人規模の人員削減を断行することなどを柱とした事業再構築計画を発表した。消費不況や郵便法違反事件の影響で業績が悪化し、財務基盤を強化する必要に迫られたためだ。10年2月期には301億円と過去最大の連結最終赤字に陥る見込みとなり、当時の浜田孝社長と有薗憲一会長が引責辞任。深沢氏はこれに伴って社長に就任した。

   しかし、深沢氏をトップにすえた新体制には、すぐにきしみが生じた。そもそも深沢氏は創業家出身の有薗氏と非常に近い存在で、「なぜ深沢さんだけが生き残るのか」との不信感は創業メンバーだけでなく、役員や社員の間にも広がった。深沢氏に反発する勢力が急速に台頭した。その頂点には井沢信親専務がいたという。

   両氏の対立で、経営改革どころでない状況に陥った。3月の店長会議では、毎年の恒例だった年間売り上げ目標などを経営側が示せず、店長以下の現場に困惑が広がった。3月に入っても新年度の収支計画が策定できない状態になり、役員の一部からは「経営陣は戦略を明確に示さない。このままでやっていけるのか」との焦燥感も出てきた。

   ついには「この社内のゴタゴタに、筆頭株主のビックカメラや主要行が嫌気をさした」(関係者)といい、深沢氏は混乱を収拾するよう迫られ、やむなく辞任を決意。ベストの子会社「さくらや」の社長を務め、混乱に巻き込まれなかった小野氏を後任に決めたうえで、20日の取締役会で、全18人の取締役のうち、深沢氏を含む11人が5月で退任することを提案した。

連帯責任でほぼ役員総退陣に近い形のけじめ

   混乱を招いた連帯責任で、ほぼ役員総退陣に近い形でけじめをつけるというものだが、対立した井沢氏も当然、道連れにするもの。これに反対した井沢氏を解職することで収束を図った。

   だが、「これで混乱が収まるのか」との懸念は完全には拭えない。障害者団体の郵便料金割引制度を悪用した郵便法違反事件で高まった客離れが収まらない中、イメージダウンを加速する可能性があるのに加え、「ビックの介入を招くきっかけになるかもしれない」との警戒感も出ている。ベストは今、自社店舗の一部を「ビック」の看板につけ替え、ビックの知名度やポイントシステムを活用して再建を果たそうとしている。今回のトップ人事にビックの意向が強く働いたとの見方が専ら。実際、小野氏とビックとの関係は強いと見られている。

   経営再建の正念場にありながら、ぶざまな社内混乱をさらしたベスト。再建の行方には一段と不透明感が広がっている。