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火山噴火で輸入ストップ 生ハム、ワイン、花、医薬品

   アイスランドの火山噴火により欧州で空路規制が続くなか、日本でも輸入品に影響が出始めている。チーズ、ワイン、生ハムといった食材やブライダルブーケに用いられる花きがストップし、高級ブランドのバッグや洋服は夏物の入荷が遅れそうだ。

   もっとも深刻なのはがん検査に用いられる放射性医薬品で、医療機関では検査を遅らせるなどの対応に追われている。

   本場ヨーロッパのチーズを直営店で販売している日本マイセラ(東京都中央区)は、ホームページで「アイスランド火山噴火による欧州航空便欠航により、一部商品のお届けが遅延もしくは不可になる可能性がございます」と発表した。イタリアのモッツァレラ、ゴルゴンゾーラ、リコッタ、フランスのブリー、ロックフォールといったチーズを毎週、空輸している。

放射性医薬品の原料は100%欧州からの輸入

欧州産のワインにも影響
欧州産のワインにも影響

   ところが2010年4月12日の週から入荷がストップした。今のところ在庫はあるので目立った混乱はないというが、空路規制が長引けば4月26日以降に欠品する可能性がある。

   また同社は百貨店やレストラン、ホテルなどにも卸している。ゴールデンウィーク中に開催されるイベント用に通常の2倍の量を入荷する予定だった。

   仕入部マネージャーの長岐佳樹さんは、

「時期が悪かった。欧州空港の規制が徐々に緩和されているようだが、空港にはたくさんの荷物が溜まっていて、すぐには届かないと思います。ゴールデンウィーク間際に着いても、税関が休みなので間に合いません」

と困惑している。

   日本貿易振興機構(JETRO)によると、ワイン、スペインのイベリコ豚、生ハムにも影響が出始めている。

   輸入食品を販売する明治屋の広報担当者は、「現状では影響はないが、空輸規制が何か月にも及べば欠品が出てくるかもしれない」といっている。

   ヨーロッパから空輸している医薬品にも影響が出ている。

   がんの転移診断などに使われている放射性医薬品「テクネチウム製品」の原料「モリブデン99」は100%欧州からの輸入だ。作り置きができないので在庫は僅かだ。販売元の日本アイソトープ協会が医療機関に4月20日、テクネチウム製品の供給制限について緊急のニュースリリースを配信した。テクネチウム製品を使った検査は日本で年間90万件、行われている。医薬品・アイソトープ部の担当者は、医療機関では検査を遅らせたり、別の検査方法で代用したり、と対応に追われているという。

規制が緩和されても、緊急貨物が最優先される

   JETROによるとコンタクトレンズも多くがアイルランドやイギリスからの輸入で、枚数が必要になる使い捨てタイプは空路規制が長引けば影響が出そうだ。

   また、品質管理が厳しい高級ブランドのバッグや小物、ジュエリー、洋服などは空輸なので、夏物に遅れが生じると見られている。

   花きにも影響が出ている。東京都から委託を受け中央卸売市場を運営している大田花きは、09年1~12月に扱った花きのうち15%が輸入で、そのうち6%をヨーロッパから仕入れている。営業担当者によると、ブライダル用のブーケに好まれるアマリリス、ヒヤシンス、ライラックといった花が輸入できなくなっている。

「規制が緩和されても、医薬品、海外で亡くなった人の遺体といった緊急貨物が最優先されて、続いて旅客といった順に輸送が始まり、花は後回しになります。むしろ4月26日以降のほうが混乱は大きくなり、落ち着くには1週間以上かかると見ています」

   欧州連合(EU)加盟27か国の交通担当相は4月19日、ビデオ会議で空路規制を緩和することに合意し、20日午前(日本時間同午後)から本格的に再開するとしている。一方で英航空当局は20日、再び噴火が始まったと発表していることから、空路の混乱はまだ続きそうだ。